本機能は MAPRISE が独自に試作している地震シミュレーション機能の現状と考え方を説明したものです。詳細な実装仕様・パラメータ・統合キー設計等は当社のノウハウとして非公開とさせていただきます。本機能は研究開発段階にあり、出力結果はあくまで参考情報としてご利用ください。
1. 機能概要
MAPRISE の地震シミュレーション機能は、九州地域における代表的な地震シナリオを対象に、1km メッシュ単位の計測震度分布と、建物単位の倒壊確率を地図上で可視化するものです。Phase 2-A 簡易版として現在公開しています。
主な機能
- 6 つの想定地震シナリオから選択して震度メッシュをヒートマップ表示
- 九州主要 17 都市の建物別倒壊確率レイヤー (PLATEAU 3D 都市モデル連携)
- シナリオ別の前提条件・参考データの提示
- AI チャットからシナリオ・地点ベースで質問可能
2. 扱うデータ
| データ種別 | 出典 / 提供組織 |
|---|---|
| 想定地震シナリオ (震源位置・規模・断層長 等) | 地震調査研究推進本部 / 内閣府 中央防災会議 / 福岡県 等の地震被害想定報告書 |
| 表層地質情報 (経験的増幅率の基礎) | 産業技術総合研究所 シームレス地質図 V2 |
| 3D 建物モデル (建築年・構造・高さ 等) | 国土交通省 PLATEAU |
| メッシュ・行政界 | 国土交通省 国土数値情報 |
3. 参考論文・モデル
本機能の計算ロジックは、地震工学・建築工学分野で広く引用されている以下の公開モデル・論文を参考に構成しています。
- 司 宏俊・翠川 三郎 (1999) 「断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式」 (日本建築学会構造系論文集)
- 藤本 一雄・翠川 三郎 ら 表層地質に基づく経験的サイト増幅率の研究 (産業技術総合研究所 シームレス地質図 V2 に同梱される増幅率モデルを利用)
- 須藤 敦史・山崎 文雄・松岡 昌志 (2019) 系統 建物被害関数の研究 (地震工学関連学会発表論文)
- 地震調査研究推進本部 「全国地震動予測地図」関連の活断層モデル・震源モデル
上記は本機能が参照する代表的な公開知見の例です。実装にあたっては各論文・モデルの数式を独自に再現・調整しており、当社実装と原典は同一ではありません。
4. 計算ロジックの概要
詳細な実装は非公開ですが、計算の大まかな流れは以下の 3 段階で構成されています。
STEP 1: 震源 → 工学的基盤
選択された想定地震シナリオ (震源位置・規模・断層長等) を入力として、距離減衰式により各 1km メッシュ中心点における工学的基盤 (Vs ≒ 400 m/s 相当) での最大速度等を推定します。
STEP 2: 工学的基盤 → 地表 (計測震度)
産業技術総合研究所のシームレス地質図 V2 を基礎とした表層地質単位ごとの経験的増幅率を適用し、各メッシュの地表面における最大速度を算出のうえ、計測震度 (JMA 震度相当) に換算します。
STEP 3: 地表震度 → 建物別倒壊確率
PLATEAU の 3D 建物データから建築年代・構造・高さなどの属性を取得し、メッシュ震度と建物属性を入力とする被害関数により、建物 1 棟ごとの倒壊確率を確率値として算出します。
海上メッシュは行政界に基づいて除外しています。震源との距離が大きく振動が及ばないメッシュも結果に反映されるよう、計算範囲は九州全域 (約 47,579 メッシュ) を対象としています。
5. ご利用にあたっての注意事項
- 本機能は研究開発段階の試作機能であり、出力結果はあくまで参考情報です。実際の地震時の揺れ・被害を保証するものではありません。
- 防災・避難・建物耐震性の最終判断には、気象庁発表情報、自治体ハザードマップ、専門技術者 (構造設計者・耐震診断技術者等) による評価を優先してご利用ください。
- 本機能は震度・倒壊確率の概略を可視化するものであり、地震保険料率の算定・耐震診断書の代替・行政手続きへの使用には適しません。
- 対象シナリオ・対象範囲・建物データのカバレッジ等は今後拡充予定です。現時点で対象外の地点・建物については「データなし」として表示されます。
本機能で表示される情報は、関係省庁・自治体・気象庁・地震調査研究推進本部等の公式発表情報と矛盾する可能性があります。実際の防災判断は必ず公式情報を優先してください。
6. 今後の展望と学術機関との連携
本機能は将来的に、地震工学・地盤工学・建築工学等の専門知見を有する大学・公的研究機関との連携を行い、計算モデルの妥当性検証 (ベンチマーク) と、より高度な被害関数・サイト増幅率モデルの導入を進めていく予定です。
- 想定シナリオの拡充 (内陸活断層・海溝型地震の追加)
- 建物データカバレッジの拡張 (PLATEAU 未整備地域の補完)
- 被害関数・地盤増幅率モデルの学術連携によるベンチマーク
- 過去地震 (2016 年熊本地震 等) との後ろ向き検証
連携にご関心のある研究機関・専門技術者の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。