現職の不動産実務者の方にMAPRISEをご覧いただいた際、『重要事項説明の水道・ガスの欄も、地図やレポートに載せられないか』とご提案をいただきました。調べた結果、水道は断念し、都市ガスは九州7県で地図化できました。何ができて、何ができなかったのか、そして地図化にあたって譲れなかった2つの設計判断を記録します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今回は新機能の紹介というより、ある一言をきっかけに調べて分かったこと、そして地図化にあたって悩んだ末に下した判断の記録です。
先日、現職の不動産実務者の方にMAPRISEをご覧いただく機会がありました。その際、「重要事項説明書には水道・ガスに関する記載欄がありますが、それも地図やレポートに載せられないんですか?」というご提案をいただきました。正直に言うと、それまで水道・ガスは検討の対象外でした。せっかくのご指摘なので、実際に調べてみることにしました。
結論から言うと、水道は載せられませんでした。一方で都市ガスは、九州7県を対象に地図化できました。今日はその経緯と、地図化にあたって譲れなかった判断を書き残します。
水道について ― なぜ断念したか
水道管路の情報は、水道法上の水道施設台帳の記載事項であり、水道事業者であればどこでも保有しています。近年はインターネットで公開する事業体も増えてきましたが、公開の主目的はあくまで住民からの個別の問合せを減らすことであり、第三者による再配信は想定されていません。事業体によっては、閲覧に登録や誓約への同意を求めるところもあります。
九州7県の水道事業体を確認した限り、商用の二次利用を明示的に許諾している事業体は限られていました。そのため、MAPRISEへの取り込みは見送り、水道については引き続き各地域の窓口へ確認していただく、という結論に至りました。これは各事業体の公開方針を問題視しているわけではなく、住民サービスとしての情報公開と、第三者による商用の再配信は、そもそも目的が異なるということだと理解しています。
都市ガスについて ― なぜ地図化できたか
一方、都市ガスの導管を管理する一般ガス導管事業者については、資源エネルギー庁が事業者の一覧を公表しています。そして各事業者は、ガス事業法に基づく託送供給約款によって、自社の供給区域を公表しています。これらはいずれも公表されている文書であり、そこから事実情報を抽出し地図に落とし込むことができました。
九州7県(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)の26事業者・87件の供給区域レコードをもとに、対象249市区町村(政令指定都市は行政区単位)を、次の3区分で地図に表示しています。
| 区分 | 市区町村数 | 割合 |
|---|---|---|
| 供給区域あり | 82 | 32.9% |
| 情報未確定(事業者は存在) | 3 | 1.2% |
| 該当事業者なし | 164 | 65.9% |
(2026年8月時点。うち14件は供給範囲に関する特記事項を保持しています)

レイヤーメニューでは「生活施設・学区」のグループに置いています。小学校区・中学校区と同じく、地域の生活基盤情報という位置づけです。

設計上の判断(ここが今回の核心です)
地図化そのものより、地図化にあたってどこまで細かく描くかの判断に、いちばん時間をかけました。実務者の方への誠実さとして、2点だけは譲りませんでした。
1. 町丁字レベルの表示を、あえて採用しなかった
託送供給約款に記載されている部分供給の範囲は、「市道○○線以西」といった道路境界によって記述されているケースが多く、行政区画である町丁字のポリゴンとは境界が一致しません。もし町丁字単位で塗り分けてしまうと、実際には一部区域にしか供給されていない町丁字を、あたかも全域供給されているかのように誤って表示してしまうことになります。
正確に描けない解像度で塗るくらいなら、精度を落としてでも誤解のない粒度に留めるべきだと判断し、市区町村単位の表示にしています。地図上のポップアップにも「当該市区町村内に供給区域が存在することのみを示し、市区町村全域への供給や個別敷地の供給可否を示すものではありません」と明記しています。

2. 「供給なし」と「情報未確定」を、区別した
もう1つ悩んだのが、公表資料から供給区域を正確に読み取れなかった市区町村の扱いです。一般ガス導管事業者自体は存在するのに、約款の記載だけでは供給区域の範囲を確認しきれない市区町村が、今回3件ありました。
ここで「なし」の色で塗ってしまうのは簡単ですが、それは事実と異なります。事業者が存在する以上、実際には供給されている可能性が十分にあるからです。「事業者が存在しない」と「事業者は存在するが確認できていない」は、まったく別の情報であり、混同すれば誤情報になります。そのため、この3市区町村は「情報未確定」として、別の色で分けて表示することにしました。
重要事項説明との関係について、正確に書いておきます
宅地建物取引業法第35条第1項第4号は、飲用水・電気・ガス・排水施設の供給に関する事項を定めています。今回地図化できたのは、このうち都市ガスに関する部分の参考情報のみです。水道・電気・排水施設については従来どおり別途の確認が必要であり、この機能だけで同号を充足するものではありません。
また、今回のデータはあくまで市区町村単位の情報です。個別の敷地に実際に配管が来ているかどうかまでは示せません。重要事項説明書の作成にあたっては、本レイヤーを一次的な手がかりとしてご利用いただき、対象敷地における供給の可否は、必ず該当エリアの一般ガス導管事業者へ直接ご確認ください。当方は、掲載している各ガス事業者と提携する関係にはありません。
クリックすると分かること
地図上のマーカー・区域をクリックすると、その市区町村の状況・該当する事業者名・照会窓口を確認できます。

おわりに
今回のきっかけは、実際にMAPRISEを使う場面を思い浮かべてくださった実務者の方からの、何気ない一言でした。開発チームだけで考えていると気づけない「重説の欄」という視点から、水道は難しく都市ガスはできる、という具体的な線引きが見えてきたのは、率直に良い経験でした。
一方で、できることが分かったからといって、精度を誇張して見せるつもりはありません。町丁字ではなく市区町村単位に留めたことも、「なし」と「情報未確定」を分けたことも、この情報を実務で使う方に誤解を与えないための判断です。参考情報としての性質を保ったまま、少しでも机上調査の助けになればと考えています。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事で紹介した都市ガス供給区域データは、「一般ガス導管事業者一覧」(資源エネルギー庁、2025年6月1日時点)および各一般ガス導管事業者が公表する託送供給約款等をもとに、当方が作成した参考情報です。件数・区分は2026年8月時点のものであり、当方が個別の一般ガス導管事業者と提携する関係にはありません。掲載内容は参考情報であり、個別敷地における供給可否は、必ず該当エリアの一般ガス導管事業者へ直接ご確認ください。
タグ: #都市ガス #重要事項説明 #オープンデータ #データ品質 #九州
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