『調査はまず住所をピンポイントで入れて、そこから周辺を見ていく』―― 現役の不動産会社常務(M常務)と、住宅メーカー出身のYさんからいただいた一言がきっかけで、MAPRISEの住所検索を九州全域・地番レベルで作り直しました。ケの字ひとつの表記揺れも、ハイフン区切りの略記も、ちゃんと拾って候補を提案します。開発チームが火のついたように動いた3日間の記録です。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今回は機能アップデートのご報告というより、ちょっとした「開発の裏側」の話をさせてください。きっかけは、お二人からいただいた一言でした。
「面」で見る自分と、「点」から入る現場の違い
私(Kinoko)は根っからの地図好きで、MAPRISEを作っているときも無意識に「面」で地図を眺めています。九州全体をざっくり見て、気になるエリアにズームして、そこから少しずつ対象を絞り込んでいく。地図を触るのが楽しくて仕方がないタイプなので、これが自分にとっての自然な動き方でした。
ところが、現役の不動産会社常務でいらっしゃるM常務と、住宅メーカーで長年最前線に立たれ、現在は別のお仕事をされているYさんに実際の業務についてお話をうかがったところ、根本的に発想が逆だと気づかされました。お二人いわく、実務では「まず調べたい住所をピンポイントで入力して、そこから周辺情報を見ていく」のが基本動作なのだそうです。担保評価でも、重説の準備でも、まず対象の一点が決まっていて、そこを起点に周辺のハザードや用途地域、取引事例へと視野を広げていく。「面から点」ではなく「点から面」。地図好きの自分が長年当たり前だと思っていた操作の前提が、現場の当たり前とはまるで違っていたわけです。
言われてみれば、確かにそうでした。それまでのMAPRISEの住所検索は、代表的な建物や駅、公共施設、あるいは市区町村レベルまでしか実用的に機能していませんでした。「ピンポイントで狙った番地に一発で着地する」という、実務では最も基本的な動作が弱かったのです。この指摘をいただいて、開発チーム(というか、ほぼ自分なのですが)に火がつきました。
九州全域・249市区町村を、地番レベルで拾えるように
まず取り組んだのは、住所データそのものの底上げです。国が公開しているアドレス・ベース・レジストリ(ABR)から、九州7県・249市区町村すべての町字データと地番データを取り込みました。地番の行数は約2,885万件。これを既存の検索エンジンと組み合わせるハイブリッド方式にして、地番まで解決できるときは地番を、それが難しいときは町字の代表点を、というように精度に応じて自然に使い分けられるようにしています。
「ケ」と「ヶ」、カタカナとひらがな ― 表記揺れにも強く
住所は人によって表記がまちまちです。「姪ノ浜」と「姪之浜」、「竜ヶ原」と「竜ケ原」。こうした表記の揺れを内部で正規化して同一視するようにしたので、どちらで入力しても同じ結果にたどり着けます。「姪の浜」を「姪浜」と省略して入力しても大丈夫です。国のデータ4万5千件以上を実際に突き合わせて、どういう略され方をしているパターンがあるのかを機械的に洗い出し、拾えるようにしました。
ハイフン区切りの略記も、ちゃんと丁目・番地・号に補正
「三丁目一番五号」を律儀にフルで打つのは面倒です。そこで「3-1-5」のようなハイフン区切りの略記も解釈できるようにしました。

このように、略記を入れると正式な表記の候補が「もしかして」の形で提案されます。これは単純な文字列マッチだけでなく、AI的な補正も組み合わせているので、多少あいまいな入力でも候補にたどり着きやすくなっています。
候補をクリックすると、地図はその地番へピンポイントで飛びます。

一発でピンポイントに着地して、そのままレポート生成にも進めます。狙った番地に直接降りて、そこから周辺のレイヤーを重ねていく。まさにM常務とYさんが教えてくださった「点から面へ」の動きが、そのままMAPRISEの操作として形になりました。
本番の実データで、初めて見えた落とし穴
正直に書くと、一発でここまでうまくいったわけではありません。実装を進める中で、本番の実データを通して初めて見つかった不具合がいくつもありました。
例えば、存在しない丁目を指定されたときに、それを黙って隣の丁目の結果にすり替えて返してしまっていたケース。あるいは、住所が見つからなかったときに、もっともらしい別の地名を「これが分析した場所です」と名乗らせてしまっていたケース。どちらもローカルでのテストでは気づけず、実際のチャットで試してようやく発覚しました。見つかるたびに「うわ、これは危ない」と冷や汗をかきつつ、その場で直して、検証して、また試す。この繰り返しでした。
失敗やミスは正直たくさんあります。それを大げさに騒ぎ立てたり、誰かを叱責して萎縮させたりするより、「まあ、あるよね」「じゃあ直して、また試そう」という空気の中で開発を進めるほうが、結果的にずっと前に進みます。ミスを恐れて手が止まるより、次はうまくいくと信じてもう一度手を動かす。そのスピリットで、この3日間はかなりのスピードで機能を作り込めたと思っています。
現場の声が、そのまま形になる楽しさ
今回いちばん嬉しかったのは、実際に業界の最前線にいる方、あるいは最前線にいた方のリアルな一言が、数日でそのままプロダクトの機能として動き出したことです。「こう使いたい」という声を聞いて、「それなら」と手を動かして、実際に画面の上でピンポイントに着地する。誰かの役に立ちたい、使ってもらいたいという気持ちが、そのまま形になる瞬間は、何度経験してもやっぱり楽しいものです。
M常務、Yさん、貴重なお話をありがとうございました。これからも現場の声を聞きながら、地図好きの視点と実務の視点、両方から使えるMAPRISEを作っていきます。
本記事で紹介した画面はいずれも本番環境のスクリーンショットです。表記揺れ吸収・略記補完の対象範囲は今後も拡大していく予定です。
タグ: #住所検索 #ジオコーディング #UI/UX #データ更新 #開発ストーリー
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