PLATEAU建物レイヤーが持つ「構造」区分(木造・RC・SRC・鉄骨造など)のコード対応に誤りがあることが分かり、国際標準の公式コードリストと突き合わせて是正しました。AIチャットやPDFレポートでの構造表示が正確になったのはもちろん、今回はPLATEAUという国家事業の上でMAPRISEが担う役割と、業種ごとに考えた重畳表示のアイデアもあわせてご紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。PLATEAU建物レイヤーの使い方、用途不明建物の補完に続く、PLATEAU関連の第3弾です。今回は「非木造」の建物が、地図上では「鉄骨造」と表示されていた、という話から始めます。
その「鉄骨造」、実は「非木造(種別不明)」でした
PLATEAU建物レイヤーには、用途別・耐震基準別・高さ別に加えて「構造」という属性があります。木造・RC(鉄筋コンクリート造)・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)・S(鉄骨造)・軽量鉄骨造など、建物の主要構造材を表す区分です。これは地図上の表示だけでなく、AIが建物ごとの地震倒壊確率を分析するときの計算にも使われる、いわば縁の下の属性です。
ところが社内で別件の検証をしていた際、ある建物のポップアップが「鉄骨造」と表示しているのに、元データを辿ると実際は「非木造(種別不明)」を意味するコードだったことに気づきました。一棟だけの誤表示ではありません。調べてみると、木造・RC・SRC・S・軽量鉄骨・レンガ/CB造という6区分の対応表そのものが、国際標準の公式コードリストとズレていたのです。
犯人は「存在しない区分」を差し込んだこと
原因を追うと、数年前にこの対応表を作った際、公式のコードリストを確認せず「都市計画基礎調査の分類だろう」と推定で組んでしまっていたことが分かりました。具体的には、実際には存在しない「防火木造」という区分を2番目に差し込んでしまったため、それ以降の区分がひとつずつ後ろへズレていたのです。
| コード | 601 | 602 | 603 | 604 | 605 | 606 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| これまでの推定(誤) | 木造 | 防火木造 | SRC | RC | S | 軽量鉄骨? |
| 公式コードリスト(正) | 木造 | SRC | RC | S | 軽量鉄骨 | レンガ・CB・石造 |
面白いのは、当時の記録に残っていた分布データが、実はこの誤りをずっと示唆していたことです。「防火木造が全体の0.2%」という数字が記録されていたのですが、日本の建物ストックで防火木造が0.2%というのはあり得ない低さです。一方、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)が0.2%なら、実態としてごく自然な数字。データそのものが「これは違う区分では?」と何年も前から言い続けていたのに、誰も公式リストと突き合わせて確認していなかった、というわけです。地図オタクとしては、こういう「データの中に埋もれていた矛盾」を見つける瞬間が一番ぞくぞくします。
しかも厄介なことに、この対応表は表示する場所ごとに別々に実装されていて、ズレ方もそれぞれ微妙に異なっていました。同じ建物なのに、AIチャットでは「SRC」、別の画面では「コンクリートブロック造」と表示される、という食い違いまで起きていたのです。
国が公開している一次情報まで遡って、全経路を書き直す
そこで、国土交通省Project PLATEAUが準拠する国際標準の建物属性コードリスト(IUR公式コードリスト)を一次情報として直接取得し、それぞれの対応表をすべて公式定義に書き直しました。

普段はこうやって、実際の航空写真とも重ねて目視確認しながら、PLATEAUのデータをできるだけ正確な形で仕上げています。今回の是正では、九州域内のPLATEAU建物155万棟あまりのうち、約157,000棟(全体の約1割)で構造ラベルが実際に変わりました。これに連動して、地震シミュレーションの倒壊確率も一部再計算しています。

是正後は、この「構造:RC」の表示も、その下にある「AIで6シナリオ別倒壊確率を分析」ボタンが参照する構造区分も、公式コードリストに基づいた正しい値になっています。表示のためだけでなく、AIの分析そのものの土台が正確になった、というのが今回の意味です。

地図左側のこの構造フィルタも、今回是正した8区分そのものです。木造の建物だけ、RC造の商業ビルだけ、といった絞り込みが、公式コードリストに基づいた正確な区分でできるようになりました。
PLATEAUという国家事業の上で、MAPRISEが担っている役割
PLATEAUは国土交通省が主導する国家事業として、今後もデータの更新・精度向上・対象地域の拡大が続いていく見込みです。MAPRISEの役割は、この国が整備し続けてくれる一次情報を、できるだけ分かりやすく地図上に可視化し、業務で使えるレベルまでスクリーニングできる仕組みに仕上げることだと考えています。今回のような構造コードの検証・是正も、その仕上げ作業の一つです。
さらに、この構造データは生成AIとの連携にも活かされています。建物をクリックして「AIで6シナリオ別倒壊確率を分析」を選ぶと、その建物固有の構造・築年代データをもとにAIが分析を行う、という部分的な「AIによる制御」もすでに組み込んでいます。今回の是正で、この分析の土台となる構造データそのものの正確性が上がりました。
業種別に考えてみた、構造データ×他レイヤーの重畳アイデア
正確になった構造データは、単体で見るだけでなく、MAPRISEの他のレイヤーと重ねてこそ面白いと考えています。地図オタクとして、各業種の方が使う場面を想像しながら考えたアイデアをいくつかご紹介します。
不動産仲介・宅建業者の方には、構造×地盤ボーリング柱状図の重畳がおすすめです。「RC造だから安心」と思われがちな物件でも、周辺の地盤が軟弱層主体なら、その旨をお客様への説明に加えられます。構造だけでは見えないリスクを、地盤データと組み合わせて補う発想です。
金融機関(融資審査)の方には、構造×耐震基準×多段階浸水想定の重畳が有効だと考えています。担保物件が旧耐震基準の非木造か、新耐震基準のRC造かで地震リスクの評価は大きく変わりますし、そこに浸水想定を重ねれば、地震と水害という異なる災害リスクを一画面で複合的に評価できます。
士業(鑑定・調査)の方には、構造×地価公示・地価調査ポイントの重畳を考えています。再調達原価法による鑑定評価では建物構造の区分が前提になりますが、周辺の地価動向と構造分布を同時に見ることで、対象エリア全体の資産構成を裏付ける一次情報として使えるはずです。
デベロッパーの方には、構造×高さ別×用途地域の重畳です。旧耐震基準かつ木造・低層の建物が密集しているのに、用途地域上はもっと高い建物が建てられるエリア。これは面としての再開発ポテンシャルを示す、まさにデベロッパーが探しているスクリーニング条件になるのではないでしょうか。
自治体(都市計画・防災)の方には、構造×耐震基準×将来推計人口の重畳を考えました。旧耐震基準の非木造建物が密集していて、かつ将来推計人口があまり減らない(=まだ多くの方が住み続ける見込みの)エリアこそ、耐震化を優先的に呼びかけるべき場所だと考えられます。限られた予算の中で、どこから手をつけるかの優先順位づけに使えるはずです。
これらはまだアイデアの段階のものも含まれますが、正確なデータという土台があってこそ、こうした重畳表示の話がようやく現実味を持ってきます。ビッグデータを地図の上でいろいろ組み合わせて「こんな見方もできるのでは」と考えている時間は、開発者として素直に楽しい時間です。誰かの実務に役立つ形になったら、これほど嬉しいことはありません。
引き続き、PLATEAUという国の資産を、できるだけ正確に、できるだけ使いやすい形で磨いていきます。
本記事で紹介した構造区分の是正は、国土地理空間情報標準に基づく公式コードリスト(Project PLATEAU準拠)との突き合わせによるものです。AIによる倒壊確率分析は参考情報であり、個別建物の耐震性能を保証するものではありません。実際の耐震診断・改修の要否については、必ず建築士等の専門家にご相談ください。
タグ: #PLATEAU #データ品質 #建物構造 #AI #オープンデータ
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🆕 New on the MAPRISE blog. 《Is that building really "steel-frame"? We audited and corrected our building structure data》 We found an error in how the PLATEAU building layer's "structure" categories (wood, RC, SRC, steel-frame, and so on) mapped to their underlying codes, and corrected it against the official international code list. Beyond fixing the display in AI chat and PDF reports, this post covers the role MAPRISE plays on top of PLATEAU as a national initiative, plus some layer-overlay ideas we've been dreaming up by industry. 👉 Read the full post: https://maprise.jp/en/blog/plateau-structure-fix/ #PLATEAU #Dataquality #Buildingstructure #AI #Opendata