2021年の熱海市土石流災害を受けて生まれた新しい法律「盛土規制法」に基づく規制区域と、谷を埋めて造成された宅地の分布を示す「大規模盛土造成地」。似ているようで実は別物のこの2つのレイヤーを実装しました。福岡市・関西圏の実例、凡例の見方、そして重要事項説明との関係まで紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今回は、地味だけれど災害リスクの観点でとても重要な2つのレイヤー、「盛土規制区域」と「大規模盛土造成地」を実装したのでご紹介します。
そもそも、なぜ今「盛土」なのか
きっかけは、2021年7月に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した大規模な土石流災害です。上流部で崩落した盛土が土石流となって市街地を襲い、多くの犠牲者を出しました。この災害の検証過程で、問題となった盛土が「宅地」「農地」「森林」のいずれにも該当しない土地(資材置き場など)にあったため、当時の法律の規制対象外だったことが明らかになりました。
これを受けて、従来の「宅地造成等規制法」が抜本的に改正され、2023年5月に「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称:盛土規制法)が施行されました。土地の用途が宅地であるか農地であるか森林であるかを問わず、危険な盛土等を全国一律の基準で規制する、というのが大きなポイントです。都道府県・政令市等が規制区域を指定し、区域内で一定規模以上の盛土等を行う場合は許可が必要になります。
つまり、盛土規制区域は「最近できたばかりの、比較的新しい制度」です。自治体によって区域指定の状況が異なるのも、施行からまだ日が浅いことが背景にあります。
2つのレイヤー、実は別物です
今回実装したのは「盛土規制区域」と「大規模盛土造成地」の2つですが、これらは似て非なるものです。
① 盛土規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)
先ほどの盛土規制法に基づいて指定される区域です。区域内では、一定規模以上の盛土・切土等の工事を行う際に都道府県知事等の許可が必要になります。「宅地造成等工事規制区域」と、宅地以外(農地・森林等)も対象とする「特定盛土等規制区域」の2種類があります。これから行われる盛土行為を規制するための区域、というのがポイントです。
② 大規模盛土造成地(谷埋め型・腹付け型)
一方こちらは、過去に行われた大規模な造成の分布を示すマップです。谷や沢を埋め立てて宅地にした「谷埋め型」と、傾斜地の斜面に盛った「腹付け型」の2種類があります。この情報自体は盛土規制法以前から、2004年の新潟県中越地震や2011年の東日本大震災で大規模盛土造成地が地震時に「滑動崩落」(地すべり的に動いて崩れる現象)を起こし、宅地に被害が出た教訓を踏まえて、国が自治体に「変動予測調査」の実施を促す形で整備が進められてきました。規制区域そのものではなく、あくまで「ここは大規模な盛土の上に立っている可能性がある」という参考情報です。
冒頭の熱海の災害も、たまたま盛土だったから被害が大きくなった側面がありますが、今回の2レイヤーが特に重視しているのは、その土地が本来の地盤なのか、それとも谷を埋めたり斜面に盛ったりして人工的に造られた土地なのかという視点です。地盤の成り立ちは、地震・大雨のときの被害の出方に直結します。
使ってみる:福岡市
実際にMAPRISEで福岡市を表示すると、こんな画面になります。

福岡市南区の丘陵住宅地を拡大すると、谷筋に沿って谷埋め型(紫)の大規模盛土造成地がまとまって分布している様子がよく分かります。

使ってみる:関西圏
九州だけの機能ではないことを示すために、関西圏も見てみましょう。

大阪・神戸を取り囲む丘陵地に、規制区域と大規模盛土造成地がびっしりと分布していることが一目で分かります。都市の郊外に広がるニュータウンの多くが、こうした丘陵地の造成によって生まれてきたことを、あらためて実感させられる眺めです。
凡例の見方
今回のレイヤーは、2つの制度を1つの凡例パネルにまとめて表示しています。

盛土規制区域は、宅地造成等工事規制区域(オレンジ)・特定盛土等規制区域(赤)・区域区分不明・その他(グレー)の3区分です。大規模盛土造成地は、谷埋め型(紫)・腹付け型(オレンジ)の2区分です。色が重なって見えますが、凡例内の見出し(「盛土規制区域」か「大規模盛土造成地」か)で区別してください。
不動産業者がチェックするところ・重説として意識するところ
盛土規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)は、宅地建物取引業法第35条第1項第2号(施行令3条1項27号)に定められた、重要事項として説明すべき法令上の制限の一つです。対象地が区域内に該当するかどうかは、実務上まず確認すべきポイントになります。
一方、大規模盛土造成地の情報は、盛土規制区域そのものとは異なり、特定の区域指定に基づく法定の説明義務項目ではありません(造成宅地防災区域に指定されている場合は別途確認が必要です)。とはいえ、対象地が谷埋め型・腹付け型の大規模盛土の上にあるかどうかは、地震・大雨時のリスクを検討するうえで実務上重要な着眼点です。該当する場合は、自治体が公表している変動予測調査の結果や、必要に応じて地盤調査の実施を促す、といった対応が考えられます。
いずれも地図上の表示は参考情報であり、正式な区域指定・造成履歴の確認は、各都道府県・自治体が公表する規制区域図や調査結果でご確認ください。
対象地域について、正直にお伝えします
盛土規制区域は、全国43都道府県を収録しています(令和7年度版)。青森県・香川県・佐賀県・沖縄県は、区域指定またはデータ公開の状況により対象外です。新しい制度であるため、自治体によって区域指定・データ整備の進み方に差があるのが実情です。
大規模盛土造成地は、全国47都道府県・52,530件を収録しています(令和5年版)。こちらは全都道府県を収録済みですが、該当したからといって直ちに危険というわけではなく、詳細は各自治体の調査結果・地盤調査でご確認いただく必要があります。
いずれも全ての地域について同じ精度・同じ粒度の情報が公開されているわけではない、という点は正直にお伝えしておきたいと思います。
おわりに ― 地歴を知るきっかけに
普段何気なく暮らしている土地が、実は谷を埋めて造られたものだったり、山を切り崩して盛った斜面の上に立っていたりする、というのは、知らなければ一生気づかないことかもしれません。今回のレイヤーが、自分の住んでいる街や、検討している物件の土地の成り立ちを振り返る、ちょっとしたきっかけになればと思っています。
なお、こうした地歴を調べる観点では、明治期以降の古地図(旧版地形図)に描かれた等高線や土地利用と重ね合わせられると、谷や沢がどこにあったかをより直接的に確認できるようになります。これは今のところ実現できていませんが、今後の開発項目の一つとして検討していきたいと考えています。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事で紹介した盛土規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)および大規模盛土造成地のデータは、国土数値情報(国土交通省)をもとに作成した参考情報です。盛土規制区域は全国43都道府県(青森県・香川県・佐賀県・沖縄県は区域指定またはデータ公開の状況により対象外、令和7年度版)、大規模盛土造成地は全国47都道府県・52,530件(令和5年版)を収録しています。該当したことが直ちに危険を意味するものではなく、正式な区域指定・造成履歴の確認は各都道府県・自治体が公表する規制区域図・調査結果でご確認ください。宅地建物取引業法上の説明義務との関係については、個別の取引において宅地建物取引士・専門家にご確認ください。
タグ: #盛土規制法 #大規模盛土造成地 #災害リスク #重要事項説明 #全国対応
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