MAPRISE に九州七県の太陽光発電設備(FIT 認定)約 6.8 万件のレイヤーを加えました。データを地図に重ねて見えてきたのは、森を伐り、斜面を削って建てられた設備の存在です。保水力の低下、土砂災害のリスク、近隣への反射光(光害)。脱炭素のための再エネが、別の自然を壊していないか。一次的に報じられてきた地域の課題をもとに、立地という問題に警鐘を鳴らします。
先日、MAPRISE に「太陽光発電設備(FIT 認定)」というレイヤーを加えました。経済産業省が公表している事業計画認定情報をもとに、九州七県のおよそ 6 万 8,000 件の設備を、出力の規模ごとに色を分けて地図の上に重ねられるようにしたものです。屋根の片隅に載る小さな野立てから、山ひとつを覆うような大規模なメガソーラーまでが、ひとつの画面に並びます。
データを並べ終えて、あらためて考え込んでしまいました。「この一点一点は、いったいどんな土地の上に建っているのだろう」と。色のついた点を、森林や傾斜のレイヤーと重ねてみると、緑の濃い山あいに、不自然なほど整然とした朱色や濃赤の点がいくつも浮かび上がってきます。それは、森を伐り拓いて造られた設備の姿でした。
再生可能エネルギーという「正しさ」の影で
最初に申し上げておきたいのは、太陽光発電そのものを否定したいわけではない、ということです。気候変動への対策として再生可能エネルギーが必要であることに、異論はありません。屋根の上や工場の跡地に静かに広がるパネルには、むしろ頼もしさすら感じます。
引っかかっているのは、その「建てられ方」です。2012 年に固定価格買取制度(FIT)が始まって以降、太陽光発電は急速に広がりました。買い取り価格が保証されたことで投資が集まり、平地や屋根だけでは足りず、その一部は、森林を伐採し、山の斜面を削って造成した土地の上に建てられてきました。
森には、私たちが普段あまり意識しない役割があります。保水力です。木々と土壌が雨水を蓄え、ゆっくりと地中に浸み込ませ、土砂を押しとどめる。木の根が斜面をつなぎとめる。その森を伐り、地面を削って一面のパネルに置き換えたとき、この機能はどうなるのでしょうか。
実際、各地の報道で伝えられてきたのは、造成地からの濁水や土砂の流出、豪雨時に行き場を失った表流水の増加、そして下流に暮らす住民の不安でした。2021 年に静岡県熱海市で起きた盛土の土石流をひとつの契機として、翌 2022 年には盛土を規制する法律(盛土規制法)が成立し、2023 年 5 月に施行されました。森林法にもとづく林地開発許可も、太陽光発電を対象に基準が見直され、これまでより小さな面積の開発から許可が必要になっています。規制が後追いで強化されてきたという事実そのものが、現場で何が起きていたのかを物語っているように思います。
斜面だけではありません。パネルが反射する光が、近隣の住宅や道路に差し込む「光害」についても、各地で苦情が報じられた例があります。朝夕、思いがけない方向から届く強い反射光は、そこで暮らす人にとって日々の負担になります。失われた山の稜線、分断された動物の生息域、濁った沢の水。数字には表れにくいこうした代償が、設備の足元には積み重なっています。
脱炭素のために、別の自然を壊すのか
ここに、私がいちばん引っかかっている矛盾があります。気候変動を抑えるための再生可能エネルギーが、その設置のために、二酸化炭素を吸収し、災害から私たちを守ってくれていた森林を削っていく。森を削ってまで、その電気を生み出す意味は、本当にあるのでしょうか。
私は、これは太陽光発電という技術の問題ではなく、「どこに建てるか」という立地の問題だと考えています。屋根の上、工場の跡地、耕作放棄地、すでに人の手が入った遊休地。営農を続けながら発電する仕組み(ソーラーシェアリング)もあります。適した土地はまだ多く残されているはずで、わざわざ豊かな森を選ぶ必要は、本来ないはずなのです。多くの自治体が、山地への設置を抑制する条例をすでに定めはじめているのも、同じ問題意識の表れでしょう。
だからこそ、地図で見える必要がある
賛成か反対かを論じる前に、まず共有すべきは「事実」だと、私は思っています。どの設備が、どんな土地の上に、どれだけの規模で立っているのか。それが見えなければ、議論は印象論のぶつかり合いに終わってしまいます。
MAPRISE に加えた太陽光発電設備のレイヤーは、まさにそのためのものです。認定設備の点を、森林、傾斜、土砂災害警戒区域、河川や水系といったレイヤーと重ねてみてください。脱炭素という大義のもとで進められてきた一つひとつの開発が、地域にとって何を意味するのか。その輪郭が、地図の上に静かに浮かび上がってきます。
なお、地図上の位置は公表住所をもとにした概略であり、実際の設備の位置とは差が生じる場合があります。それでも、自治体が立地を考えるとき、金融機関が融資先の土地を評価するとき、そして地域に暮らす一人ひとりが「自分のまちの山に何が起きているのか」を確かめたいとき、この一枚の地図はきっと出発点になります。
森を削ってまで、その電気は必要なのか。地図の上に重ねた一点一点が、その問いを、静かに、しかし確かに投げかけてきます。私たちは、目をそらさずにその問いと向き合うための道具を、これからも地図の上に積み重ねていきたいと思います。造成に伴う地盤リスクという観点では盛土規制区域・大規模盛土造成地の回、森林そのものの情報は国有林GISの回もあわせてどうぞ。
出典:太陽光発電設備の位置データは、経済産業省 再生可能エネルギー電子申請(FIT 認定情報)をもとに MAPRISE が座標化したものです。本記事は公開されている制度・報道をもとにした問題提起であり、特定の事業者・設備を指すものではありません。
タグ: #メガソーラー #太陽光発電 #森林伐採 #防災 #FIT #データ更新
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📝 Is that electricity worth a mountainside? — Mega-solar in the hills, and the cost the map reveals We added a layer of FIT-certified solar PV facilities — about 68,000 across the seven Kyushu prefectures — to MAPRISE. Overlaying … https://maprise.jp/en/blog/megasolar-and-the-mountains/ #Mega-solar #SolarPV
🆕 New on the MAPRISE blog. 《Is that electricity worth a mountainside? — Mega-solar in the hills, and the cost the map reveals》 We added a layer of FIT-certified solar PV facilities — about 68,000 across the seven Kyushu prefectures — to MAPRISE. Overlaying the data on the map made one thing visible: facilities built by clearing forests and cutting into slopes. Reduced water retention, landslide risk, glare for nearby residents. Is renewable energy meant to fight climate change quietly destroying another part of nature? Drawing on issues reported on the ground, this is a warning about siting. 👉 Read the full post: https://maprise.jp/en/blog/megasolar-and-the-mountains/ #Mega-solar #SolarPV #Deforestation #Disasterprevention #FIT