令和7年度に国土数値情報として新規整備された「多段階浸水想定」データをMAPRISEに追加しました。1/10年の高頻度豪雨から1/150年の想定最大規模まで、降雨規模ごとに浸水範囲・浸水深がどう広がるかを地図上で切り替えて確認できます。遠賀川流域の例を見ながら、レイヤーの使い方と向き合い方をご紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今日ご紹介するのは「多段階浸水想定」という、少し耳慣れないレイヤーです。令和7年度に国土数値情報として新しく整備されたばかりのデータで、九州の国管理主要15水系を対象に、降雨規模ごとの浸水範囲・浸水深の広がり方を段階的に確認できます。
このレイヤーで何がわかるのか
一般的な洪水ハザードマップは「想定最大規模」の1パターンだけを示すことが多いのですが、このレイヤーの特徴は、降雨の規模を切り替えながら浸水の広がりを比較できる点にあります。左メニューの「降雨規模(年超過確率)」から、1/10年(高頻度)・1/30年・1/50年・1/100年・1/150年(想定最大規模)の5段階を選択でき、選んだ規模に応じてポリゴンの範囲と色(浸水深)が切り替わります。
ここで少し補足しておきたいのが、「1/150年」という表記の意味です。これは150年後に起きる、という時間の話ではなく、その規模の降雨が1年間に発生する確率が約1/150であるということを表しています。つまり時系列のデータではなく、「発生確率の異なる複数のシナリオ」が並んでいると捉えてください。
遠賀川流域で見てみる
実際の画面で見てみましょう。以下は北九州市周辺、遠賀川流域を1/100年規模で表示した例です。

川筋に沿って、薄い橙色(0.5〜3.0m)を中心とした浸水想定区域が帯状に広がっているのがわかります。凡例は0〜0.5m・0.5〜3.0m・3.0〜5.0m・5.0〜10m・10〜20m・20m以上の6段階(九州では最大深20m以上の該当なし)で色分けされており、同じ「浸水域」でも深さによってリスクの質が異なることが一目でわかります。降雨規模のプルダウンを1/10年→1/150年へと変えていくと、同じ流域でも範囲がじわじわと広がっていく様子を追うことができます。
九州全体で見ると、水系ごとの整備状況にも違いがある
九州広域で見ると、ピンク色の浸水想定区域が佐賀平野や筑紫平野周辺などに点在しているのがわかります。

このレイヤーで一点、正直にお伝えしておきたいことがあります。対象は国管理の主要15水系(遠賀川・山国川・松浦川・嘉瀬川・六角川・本明川・菊池川・矢部川・小丸川・球磨川・大分川・大野川・五ヶ瀬川・大淀川・肝属川)に限られており、福岡市の那珂川・御笠川のような県管理河川はデータの対象外です。また、降雨規模によって整備されている水系の数が異なり、1/150年(想定最大規模)は大淀川・遠賀川の2水系のみの整備となっています。地図上に表示されていない=リスクがない、という意味ではありません。 県管理河川については、別途「河川」レイヤーや自治体のハザードマップもあわせてご確認ください。
「何を許容し、何に備えるか」を考える材料として
このレイヤーの意義は、単に「危険な場所を示す」ことだけではないと考えています。降雨規模ごとに浸水の広がり方が段階的に示されているということは、裏を返せば「高頻度で起こりうる浸水(1/10年〜1/30年)」と「めったに起こらないが起きたときの被害が大きい浸水(1/150年)」を分けて考えられる、ということでもあります。
用地選定・建物用途の検討において、「どの規模までの浸水を許容し、どこからは対策や備えが必要か」という線引きは、地域ごとの土地の最適な利用を考えるうえでの材料の一つになり得ます。高頻度のシナリオでも浸水域に入る場所であれば、盛土や1階部分の使い方を工夫する。想定最大規模でのみ影響が出る場所であれば、備蓄や避難計画といったソフト対策を重視する。このように、リスクの濃淡に応じて対応の優先順位を組み立てられるのが、段階的なデータならではの価値だと思います。
大切なことなので、あらためてお伝えします。このデータは、決して不安をあおるためのものではありません。 正しく知ること、理解すること、備えをすること、そして考えること。そのための材料の一つとして提供しています。
他のハザードレイヤーやAIチャットと組み合わせる
多段階浸水想定は、単独で見るよりも、他のハザード情報と重ね合わせて検討することでより立体的な理解につながります。MAPRISEには土砂災害警戒区域(土石流・急傾斜地・地すべり)、内水浸水想定区域、地震動予測、地質図など多数のレイヤーがあり、透過度を調整しながら重ね合わせて確認できます。「洪水は届かないが土砂災害警戒区域には入っている」「内水(雨水出水)と外水(河川氾濫)の両方が重なるエリアだ」といった、単一のハザードだけでは見えてこない複合的なリスク像を掴めます。
また、こうした重畳的なリスク判定自体を、画面右のAIチャットに質問していただくこともできます。地図を目視で読み解くだけでなく、「この地点の浸水リスクと土砂災害リスクを教えて」といった問いかけに対して、視覚情報・定量情報を踏まえた回答をAIがサポートします。MAPRISEは、地図という目で見る情報、浸水深や確率といった数値の情報、そしてそれらを踏まえた「結局どう考えればいいか」という判断材料まで、一連の流れとして支援することを目指しています。
引き続き、正しく知り、考えるための材料を増やしていきます。地盤そのもののリスクを知りたい方は盛土規制区域・大規模盛土造成地の回もあわせてどうぞ。
本データは参考情報です。実際の防災対策・土地利用の判断にあたっては、自治体が公表する洪水浸水想定区域図・ハザードマップおよび専門家の助言もあわせてご確認ください。
出典:国土数値情報(多段階浸水想定)令和7年度版・国土交通省(CC BY 4.0)
タグ: #多段階浸水想定 #防災 #ハザード #国土数値情報 #データ更新
他言語のシェアテキスト (例外運用向け)
通常は上の Quick share をご利用ください (X 系は日本語、LinkedIn は英語に固定)。下の 4 ペインは「英語記事を X で日本語紹介したい」「日本語記事の LinkedIn 投稿を日本語で出したい」等の例外運用に使えます。各テキストはコピー編集してから投稿することも、そのまま投稿画面を開くこともできます。
📝 「もしもっと雨が降ったら」を、段階的に見る ― 多段階浸水想定レイヤーのご紹介 令和7年度に国土数値情報として新規整備された「多段階浸水想定」データをMAPRISEに追加しました。1/10年の高頻度豪雨から1/150年の想定最大規模まで、降雨規模ごとに浸水範囲・浸水深がどう広がるかを地図上で切り替えて確認できます。遠賀川流域の例を見ながら、レイヤーの使い方と向き合い方をご紹介します。 https://maprise.jp/ja/blog/multistage-flood-simulation/ #多段階浸水想定 #防災
🆕 新しいブログ記事を公開しました。 《「もしもっと雨が降ったら」を、段階的に見る ― 多段階浸水想定レイヤーのご紹介》 令和7年度に国土数値情報として新規整備された「多段階浸水想定」データをMAPRISEに追加しました。1/10年の高頻度豪雨から1/150年の想定最大規模まで、降雨規模ごとに浸水範囲・浸水深がどう広がるかを地図上で切り替えて確認できます。遠賀川流域の例を見ながら、レイヤーの使い方と向き合い方をご紹介します。 👉 詳しくはこちら: https://maprise.jp/ja/blog/multistage-flood-simulation/
📝 "What if it rained even harder?" — seeing flood risk in stages, with the Multi-stage Flood Simulation layer We've added "Multi-stage Flood Simulation" data — newly compiled as National Land Numerical I… https://maprise.jp/en/blog/multistage-flood-simulation/ #Multi-stagefloodsimulation #Disasterprevention
🆕 New on the MAPRISE blog. 《"What if it rained even harder?" — seeing flood risk in stages, with the Multi-stage Flood Simulation layer》 We've added "Multi-stage Flood Simulation" data — newly compiled as National Land Numerical Information in fiscal 2025 — to MAPRISE. Switch between rainfall scales, from a frequent 1-in-10-year storm to the theoretical maximum 1-in-150-year event, and watch how flood extent and depth change on the map. We walk through it using the Onga River basin as an example. 👉 Read the full post: https://maprise.jp/en/blog/multistage-flood-simulation/ #Multi-stagefloodsimulation #Disasterprevention #Hazard #NationalLandNumericalInformation #Dataupdate