土壌汚染対策法に基づく『要措置区域』『形質変更時要届出区域』を、全国分まとめて地図レイヤーとして実装しました。地下水・井戸水を使う地域や家庭菜園をされている方が知っておきたい観点、重要事項説明との関係、法人・個人それぞれが注意すべき点を紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今回は、土地の「汚れ」に関わる制度、土壌汚染対策法の指定区域を地図レイヤーとして実装しましたのでご紹介します。
土壌汚染対策法とは
2003年2月に施行された、土壌汚染の状況を把握し、汚染による健康被害を防止するための法律です。工場跡地などで有害物質を使用していた施設が廃止されたとき、あるいは一定規模以上の土地の形質変更を行うときなどを調査のきっかけとして、都道府県・政令市が土壌汚染の状況を調査し、基準を超える汚染が見つかった土地を区域として指定します。
対象となる「特定有害物質」は26物質あり、大きく3つに分類されます。トリクロロエチレン・ベンゼンなどの揮発性有機化合物(第一種特定有害物質)、鉛・砒素・水銀・六価クロムなどの重金属等(第二種特定有害物質)、そして農薬・PCBなどの第三種特定有害物質です。
2つの摂取経路と2つの区域
土壌汚染対策法のポイントは、汚染そのものだけでなく「その汚染が人の健康にどうつながるか」という摂取経路まで踏まえて区域を分けている点です。
- 地下水等経由の摂取: 土壌に含まれる有害物質が雨水などで溶け出し、地下水に混ざって体内に入る経路です。26物質すべてに、この経路を想定した「土壌溶出量基準」が設定されています。
- 直接摂取: 土壌そのものを口にしてしまう経路です。26物質のうち9物質に、この経路を想定した「土壌含有量基準」が設定されています。
この摂取経路の有無によって、区域は2種類に分かれます。
- 要措置区域(地図では赤): 汚染があり、かつ摂取経路がある(健康被害のおそれがある)区域です。法第9条により土地の形質変更が原則禁止され、都道府県知事の指示に基づく汚染の除去等の措置が必要になります。
- 形質変更時要届出区域(地図では緑): 汚染はあるものの、摂取経路がなく直ちに健康被害のおそれがあるとは言えない区域です。ただし法第12条第1項により、土地の形質変更を行う14日前までに届出が必要です。
地下水・井戸水・家庭菜園をお使いの方は、知っておきたいこと
先ほどの「摂取経路」の話は、実生活に置き換えるとイメージしやすくなります。
井戸水を生活用水・飲用水として使っている、あるいはこれから使おうとしている地域にお住まいの方は、「土壌溶出量基準」=地下水経由の摂取経路が関わってきます。周辺に指定区域がないかを事前に確認しておく価値があります。
また、家庭菜園で土に触れる機会が多い方にとっても、「土壌含有量基準」=直接摂取の経路は無関係ではありません。もちろん、指定区域だからといって直ちに栽培している野菜に問題が生じるわけではありませんが、自分の生活圏に指定区域がどれくらいあるのかを、まずは知っておくことに意味があると考えています。
重要事項説明との関係
土壌汚染対策法に基づく区域指定は、宅地建物取引業法施行令第3条第1項第32号により、重要事項として説明すべき法令上の制限の一つです。具体的には、法第9条(要措置区域内における土地の形質変更の禁止)と、法第12条第1項(形質変更時要届出区域内における土地の形質変更の届出)に関する事項が対象になります。
法人(不動産業・ディベロッパー)が注意すべきこと
工場跡地やクリーニング店跡地など、有害物質を使用していた可能性のある土地を取り扱う場合は、指定区域に該当していないかを早い段階で確認しておくことをおすすめします。要措置区域に該当する場合、土地の形質変更(造成・掘削等)が原則禁止されるため、開発計画そのものに影響します。形質変更時要届出区域であっても、着工前の届出という手続きが発生するため、スケジュールに織り込んでおく必要があります。
個人が注意すべきこと
住宅の購入や土地の取得を検討する際、対象地・周辺地に指定区域がないかを確認しておくと安心です。指定区域に該当していても、それだけで直ちに居住に支障が出るわけではありませんが、井戸水を使う予定がある、家庭菜園をしたい、といった具体的な利用計画がある場合は、あらかじめ知っておいて損はない情報です。
使ってみる:全国俯瞰
実際にMAPRISEで全国を表示すると、こうなります。

関東・近畿・中部の都市部を中心に、全国に指定区域が分布していることが分かります。
使ってみる:東京

都心部を中心に、非常に高い密度で指定区域が分布しています。長い産業史を持つ大都市ならではの分布と言えそうです。
使ってみる:大阪

大阪市の臨海部を中心に、こちらも高密度な分布が見られます。
使ってみる:名古屋

名古屋市では、形質変更時要届出区域(緑)に加えて、要措置区域(赤)もいくつか確認できます。
クリックすると何が分かるか
地図上のマーカーをクリックすると、指定区域の詳細を確認できます。

指定主体・所在地・指定年月日・調査契機・特定有害物質・面積が一覧で確認できます。この例では、法第14条(土地所有者等による自主調査に基づく区域指定の申請)が調査契機になっていることも分かります。
凡例の見方
凡例は、要措置区域(赤)・形質変更時要届出区域(緑)の2区分です。

対象地域について
このレイヤーは全国を収録しています(環境省「要措置区域等一覧」2026年8月時点)。ただし、表示位置は所在地(住所)から代表点を推定表示したものであり、区域の正確な形状・範囲を示すものではない点にご注意ください。地番が複数の筆にまたがる区域は先頭の1筆のみを表示しており、所在地の一部が住所として特定できない区域は表示されません。区域の詳細・最新の指定状況は、都道府県・政令市が公表する資料でご確認ください。
おわりに
工場や店舗として使われていた土地が、住宅地や商業地に生まれ変わる、というのは日本各地でよく見る光景です。その土地が過去にどう使われていたかを直接知る手段は限られていますが、少なくとも法律に基づく指定区域については、今回のレイヤーで手軽に確認できるようになりました。用地仕入れや不動産取引の実務はもちろん、自分の暮らす街を知るきっかけとしても活用いただければと思います。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事で紹介した土壌汚染対策法の指定区域データは、環境省「土壌汚染対策法に基づく要措置区域等一覧」(2026年8月時点、公共データ利用規約第1.0版)をもとに作成した参考情報です。所在地(住所)から代表点を推定表示したものであり、区域の正確な形状・範囲を示すものではありません。区域の詳細・最新の指定状況は都道府県・政令市の公表資料でご確認ください。宅地建物取引業法上の重要事項説明義務との関係については、個別の取引において宅地建物取引士・専門家にご確認ください。
タグ: #土壌汚染対策法 #環境リスク #重要事項説明 #全国対応 #用地仕入
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