「福岡は2年連続、地価上昇率日本一」とよく言われます。本当にそうなのか、天神ビッグバンの前後でMAPRISEの地価レイヤーがどう動いたかを、建築中のビルの実データや3D建物データまで含めて地図で確かめてみました。2011年から福岡に住む筆者が見てきた街の変貌も交えて。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。私(Kinoko)は2011年から福岡市に住んでいます。当時と今を比べると、正直なところ「同じ街か?」と思うことがあります。3階建てだった小さな集合住宅が、気づけば10階建て以上のマンションに建て替わっている。駅から少し歩く郊外の戸建てエリアでさえ、数軒分がまとめて用地取得され、いつの間にか高層マンションが建っている。この変化のスピードに、住んでいる本人が一番驚かされています。
この変化には、はっきりとした名前が付いています。2015年に福岡市が始めた都市再開発プロジェクト、天神ビッグバンです。今回は「よく言われる話」をなぞるだけでなく、地価・建物の築年数・建物の高さといった実データで、この説明を検証してみます。
天神ビッグバンは何を変えたのか
天神は福岡空港から直線距離でわずか5kmしかありません。この近さのせいで、長年にわたり航空法の高さ制限が建て替えの足かせになっていました。既存不適格の古いビルを建て替えようとしても、現行規制の下では以前より小さな建物しか建てられない――これでは誰も建て替えに踏み切れません。老朽ビルがそのまま残り続ける構図です。
福岡市は2014年に国家戦略特区の指定を受け、この地位を使って高さ制限の特例承認を勝ち取りました。さらに、建て替える所有者向けに市独自の容積率緩和制度(最大+50%、通称「天神BBB(ビッグバンボーナス)」)を組み合わせています。2005年の福岡県西方沖地震で老朽ストックの脆弱性が浮き彫りになったことも、所有者が実際に建て替えへ踏み切る後押しになったとよく言われます。
当初10年間だった計画は、コロナ禍による遅延を受けて2026年12月末まで延長され、現在も進行中です。この間の節目としては、2016年の水上公園リニューアル、天神ビジネスセンター、旧大名小学校跡地に建てられた福岡大名ガーデンシティ、そして2026年6月30日に竣工し8月上旬の開業を控える天神ビジネスセンターⅡが挙げられます。
これを実際に形にした功績は、2010年12月から市長を務める高島宗一郎氏(国家戦略特区の指定取得と容積率インセンティブの制度設計)、それを実務の許認可プロセスに落とし込んだ市職員の皆さん、そして実際にリスクを取って最初に建て替えに踏み切ったディベロッパー各社(福岡地所はその代表格です)に帰せられます。10年以上にわたる一貫した実行があったからこそ、「計画」ではなく「変わった街並み」として今があるのだと思います。
人口減少ニッポンで、唯一止まらない都市
これだけの規模の再開発が成立するのは、需要の裏付けがあってこそです。そしてそれこそが、福岡市の人口が持つ特殊性です。
日本全体の人口は2008年の約1億2,808万人をピークに減少局面に入っています。福岡市はその中でも稀有な例外で、1920年の第1回国勢調査以来、一度も人口が減ったことがありません。福岡市が2024年に公表した将来人口推計では、総人口は2040年頃に約170万2千人でピークを迎えると見込まれています。前回2012年の推計では2035年がピークとされていたので、5年ほど増加期間が延びたことになります。国立社会保障・人口問題研究所の推計でも、2050年の人口が2020年国勢調査を上回ると見込まれる政令指定都市は、川崎市・さいたま市・福岡市のわずか3市のみです。
要因はシンプルで、進学・就職を機に若い世代が流入する「社会増」が、死亡数が出生数を上回る「自然減」を上回り続けているためです。この安定した流入があるからこそ、天神ビッグバンのような資本集約的な再開発に、民間ディベロッパーが資金を投じられるという構図があります。
「本当に上がっているのか」を、地図で確かめてみる
ここまでは、よく報じられている話です。せっかくなので、MAPRISEの地価レイヤーを実際に開いて確かめてみました。

天神の同じ一角にある2地点、同じ変動率レイヤーで見比べただけなのに、片方は年4%超で上昇を続け、もう片方はすぐ近くにありながらまったく動いていません。これは市全体の傾向ではなく、再開発が実際に進んでいる場所にピンポイントで集中した動きだとわかります。
このうち上昇している地点の一つを、拡大して見てみます。天神1丁目96番1外――天神ビッグバンの主力タワーの一つ、**One Fukuoka Building(ワンフクオカビル)**の建設地です。

¥11,800,000/㎡は、今回調べた中で最も高い地価公示地点でした。容積率800%という数字は、ここが実際に高層建築を許容するゾーニングであることを示していますし、利用現況欄の「建築中」は、まさにこの区画で再開発が今まさに進行中であることを、地価データがそのまま裏付けている格好です。
これを、数ブロック離れた天神のもう一つの主要な通り、渡辺通りと比較してみます。

このグラフの形が興味深いところです。ここの価格は10年以上ほぼ横ばいでした――2008年の金融危機を挟んでも、2010年代を通じても動かず――それが2021年頃を境に急激に上昇し始めています。この折れ曲がりのタイミングは、一般的な景気動向よりも、天神ビッグバンの後半・より目に見える建設フェーズとぴったり重なります。10年間動かなかった地点がここで急に動き出したという事実は、単なるノイズではなく、日付を特定できる政策効果として、データにそのまま表れていると言えます。
実際に何が建て替わっているのか、3Dで見てみる
地価は「価値が動いている」ことは教えてくれますが、「何が何に建て替わっているのか」までは教えてくれません。そこでMAPRISEのPLATEAU 3D建物レイヤー――九州全域の実際の建物形状と属性を描画するレイヤー――に切り替えてみました。

天神・渡辺通り一帯は、赤(商業・業務)の密集地帯として浮かび上がります。再開発が集中しているまさにその場所です。
同じレイヤーを耐震基準別の色分けに切り替えると、本当に興味深い結果が見えてきます。日本の建築基準法には明確な年代区分があります――1970年以前、1971〜81年の「旧耐震基準」、1982〜99年に導入された「新耐震基準」、そして2000年以降のより厳格な基準です。

けやき通り周辺、警固神社前、天神駅前に広がる天神ビッグバンの再開発フットプリントは、ほぼ緑一色――つまり、最も新しく厳しい耐震基準を満たす建物ばかりです。その周辺の街区には、赤やオレンジ、つまり旧耐震基準以前・旧耐震基準の古い建物がまだ目立って残っています。これはまさに、2005年の地震がデータに残した痕跡です。再開発が進んだエリアは、文字通り現行の耐震基準に建て替わったエリアであり、その周辺の多くはまだそうなっていない、ということが一目でわかります。
もう一つ、建物の高さ別の色分けも見てみます。

ここでも同じ構図です。最も高い建物群(赤帯、60m以上)は、再開発のフットプリントとほぼぴったり重なって密集しています。これは高さ制限緩和という制度が、そのまま建物の物理的な形として表れている証拠です。街区単位で、特区の特例がどこに適用され、どこには適用されていないのかが、一目瞭然に見て取れます。
舞台裏:3Dレイヤーで実際に何を切り替えられるのか
上記の3つの色分けモードは、単なる見た目のプリセットではありません。それぞれの色分けモードの裏側で、建物1棟ごとの用途(住宅・共同住宅・商業/業務・工場/作業所・農林漁業施設・公共/その他)、耐震基準年代(旧耐震以前・旧耐震基準1971〜81・新耐震基準1982〜99・2000年基準以降)、構造(木造・鉄骨造・SRC・RC・軽量鉄骨・レンガ/ブロック・構造不明)を、色分けモードとは独立にON/OFFできる、同じフィルタ群が使われています。

この建物1棟ごとの用途・築年代区分・構造という同じデータセットは、MAPRISEの別機能である建物単位の地震倒壊確率スコアリングの土台にもなっています。このスコアリングの仕組みと、実際の観測被害データとの答え合わせについては、MAPRISEで挑戦する地震の倒壊スコアリング — 実測データとの答え合わせで詳しくご紹介しています。
数字と、住んでいるからこそわかること
ここまでの話自体は、実はそれほど目新しいものではありません。海外の不動産メディアでもすでに「福岡は2年連続、地価上昇率で全国トップクラス」と報じられています。今回私たちが加えたかったのは、その見出しの数字をそのまま信じるのではなく、1地点ずつ自分で確かめられる方法――そしてついでに、価格の動きを漠然とした「好調な市況」としてではなく、特区による高さ制限の例外・容積率ボーナス・耐震基準の後押しという、具体的なメカニズムに結びつけて見るためのデータです。
2011年からこの街に住んできた身として正直に言うと、私を一番納得させたのは見出しの上昇率そのものではなく、10年間動かなかった1本の折れ線グラフが、近くで工事が本格化したまさにその年にピンと跳ね上がる様子でした。数字と、住んでいるからこそ感じる実感は、結局のところ一致していたわけです。
もし気になったら、ぜひMAPRISEで自分の目で確かめてみてください。地価レイヤーとPLATEAU 3Dレイヤーを切り替えながら、任意の1点をクリックするだけで、ここでご紹介したのと同じ価格・用途・複数年の推移データが確認できます。
本記事の地価データは、国土交通省 地価公示・福岡県地価調査に基づく参考情報です。個別地点の将来の価格動向を保証するものではありません。投資・取引の判断にあたっては、不動産鑑定士等の専門家にご相談ください。
出典:国土交通省 地価公示、福岡県地価調査、福岡市「福岡市の将来人口推計」(2024年4月)、国立社会保障・人口問題研究所、福岡市公式サイト
タグ: #天神ビッグバン #福岡市 #地価 #都市再開発 #PLATEAU
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