地盤・建物という複合的なデータと学術的な被害関数を組み合わせて建物単位の倒壊確率を算出し、公的な観測記録・悉皆調査結果と突き合わせて精度を検証する取り組みを紹介します。
地震シミュレーションは「ある」。問題は、その数字をどこまで信じていいか
地震の被害想定サービスは世の中に数多く存在します。震度分布を色分けした地図、建物の耐震年代を表示するツール——似たようなサービスは珍しくありません。
MAPRISEが取り組んでいるのは、その一歩先です。地盤データ・建物データという複合的な情報源を組み合わせ、かつ学術的な被害関数を用いて建物単位の倒壊確率まで算出し、さらにその推定値を公的な観測記録・悉皆調査結果と突き合わせて、どれだけ実態に近いかを明示する、という取り組みです。
何と何を組み合わせているか
MAPRISEの地震シミュレーション機能(β)は、以下のデータを重ね合わせて建物単位の倒壊確率を算出しています。
- 地盤データ: 防災科学技術研究所J-SHISの表層地盤増幅率実測メッシュ
- 建物データ: Project PLATEAU 3D都市モデル(九州17都市・約155万棟の構造種別・建築年代)
- 地震動の伝わり方: 距離減衰式(司・翠川 1999)
- 建物の壊れやすさ: 構造種別ごとに専用の被害関数を使い分け(木造は須藤・山崎・松岡ら 2019の計測震度ベース、非木造は村尾・山崎 2000のPGVベース)

シナリオはこれまで紹介してきた6パターンを継続して使用しています。

拡張点: 建物1棟ごとに、より高解像度で
これまでは1kmメッシュ単位の震度分布が中心でしたが、今回のアップデートでは地盤データの解像度を大幅に引き上げ、建物ポリゴン単位での倒壊確率表示に対応しました。地図を拡大すると、震度ヒートマップから建物単位の色分け表示に自動的に切り替わります。

建物をクリックすると、構造・年代帯・選択中シナリオでの倒壊確率・地盤データの出典まで個別にポップアップ表示されます。

広域では、従来どおり震度ヒートマップで九州全域の傾向を確認できます。

この取り組みで大事にしていること: 「答え合わせ」をしていること
シミュレーションは、作っただけでは「もっともらしい数字」でしかありません。MAPRISEでは、実際に起きた地震の観測記録・現地悉皆調査データと突き合わせる検証を行っています。
- KiK-net観測点(2016年熊本地震本震、益城町): 実測された地震動の強さ・計測震度と、シミュレーション値を比較
- 益城町の建物悉皆調査: 国総研による実際の被害率データと、年代区分別のシミュレーション平均確率を比較
この照合を通じて、地盤の揺れやすさの推定に実測データを取り入れる改善や、構造種別ごとの被害関数を専用のものに置き換える改善を重ねてきました。答え合わせを繰り返しながら、実態との差を縮めていく——これが今回のアップデートの核です。
ご利用にあたっての注意
想定地震シナリオ機能は現在β版です。
本機能は研究開発段階の試作機能(β)であり、耐震診断(耐震改修促進法)には該当しません。あくまで参考情報・スクリーニング情報としてご利用ください。建築年が不明な建物は安全側(旧耐震相当)の仮定で補完しており、地震発生確率自体にも大きな不確実性があります。宅地建物取引業法第35条(重要事項説明)、建築基準法上の耐震性能証明、不動産鑑定評価、地震保険料率算定の根拠にはご利用いただけません。正式な耐震診断は一級建築士等の専門家へご相談ください。
詳細仕様は地震シミュレーション機能の概要をご覧ください。
タグ: #地震 #シミュレーション #β機能 #検証
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