国土交通省PLATEAUの3D都市モデルには、用途が「不明」のまま登録された建物が九州だけで27万棟以上あります。キャナルシティ博多も例外ではありませんでした。外部データと組み合わせて471棟の用途を補完した取り組みをご紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。以前の記事ではPLATEAU建物レイヤーの使い方をご紹介しましたが、今回は少し毛色の違う話をします。「PLATEAUのデータを、どう仕上げ直したか」という報告です。

キャナルシティ博多が、地図の上では「不明」だった
7月11日にPLATEAU建物レイヤーの用途別色分け状況のテスト・確認等で見直していたときのことです。福岡を代表する複合商業施設「キャナルシティ博多」(延床面積換算で約2万㎡、高さ63.5m)が、地図の上では住宅でも商業施設でもなく、灰色の「不明・その他」として表示されていることに気づきました。
これはPLATEAUのデータに欠陥がある、という話ではありません。全国規模で3D都市モデルを整備するプロジェクトである以上、建物一棟ごとの用途調査まで100%網羅することは現実的に難しく、「不明」という区分自体が誠実な表現です。実際、九州17都市・約155万棟のうち、用途が不明・未登録の建物は約27万棟(当社集計)にのぼります。むしろ、この規模のオープンデータが無償で整備・公開されていること自体が、都市DXの土台として非常に大きな価値を持っています。
ただ、私たちのようにこのデータを「地図サービスの一部品」として使う立場からすると、話は別です。ユーザーが地図を開いて最初に目に入るのが、著名な建物の「不明」表示だとしたら、それはプロダクトとして見過ごせません。
PLATEAUを「そのまま使う」のをやめた
多くのGISサービスは、PLATEAUのデータをそのまま表示します。それ自体は間違ったやり方ではありません。ですが私たちは、PLATEAU単体では埋まらない情報を、他のデータと組み合わせて補完するという一歩踏み込んだアプローチを取ることにしました。
具体的には、地図データ・公共施設データ・統計データなど複数の外部情報源を独自のロジックで掛け合わせ、AIによる分析も交えながら、「不明」表示になっている建物の実際の用途を一棟ずつ特定していく、という地道な作業です。処理の詳細なフローはここでは伏せますが、九州域内で延床面積2,000㎡以上(=地図上で特に目立つ規模)の「不明」建物、約770棟を優先対象として選び、これまでに471棟(約61%)の用途を実際に特定し、補正しました。
実際に補正できた建物の例
補正できた建物の一部をご紹介します。いずれも「不明・その他」(灰色)として表示されていたものが、正しい用途区分に塗り替わっています。
| 建物 | 所在地 | 規模(延床面積相当) | 補正後の用途区分 |
|---|---|---|---|
| キャナルシティ博多 | 福岡市博多区 | 約20,300㎡ | 商業系複合施設 |
| ららぽーと福岡(本館) | 福岡市東区 | 約31,400㎡ | 商業施設 |
| ブリヂストン鳥栖工場 | 佐賀県鳥栖市 | 約80,800㎡ | 工場 |
| アクアドームくまもと | 熊本市 | 約15,900㎡ | 文教厚生施設 |
| イオンタウン黒崎 | 北九州市 | 約15,800㎡ | 商業施設 |
| 熊本刑務所 | 熊本市 | 約9,200㎡ | 官公庁施設 |
| 国立病院機構熊本医療センター | 熊本市 | 約9,000㎡ | 文教厚生施設 |
| Jパワー松浦火力発電所 | 長崎県松浦市 | 約10,900㎡ | 供給処理施設 |
| 大手医薬品卸の大型物流センター | 北九州市 | 約26,900㎡ | 運輸倉庫施設 |
九州を代表する商業施設から、工場・発電所・官公庁施設まで、幅広いジャンルの「灰色だった建物」に色がついたことになります。
地図上での見え方
実際の地図では、こうして個別に用途を補正した建物を、金色の枠線で他の建物と視覚的に区別できるようにしています。博多の祇園・住吉神社周辺を例に見てみましょう。


金色の枠線で囲まれた建物をクリックすると、ポップアップに「個別調査済み」のバッジが表示されます。ユーザーからすると、「これはMAPRISEが実際に手を入れて確認した情報である」ということが一目で分かる仕組みです。
PLATEAUという土台があってこその取り組み
念のため強調しておきたいのですが、私たちがやっているのは、あくまでPLATEAUという強固な土台の上に、限られた範囲で情報を上乗せしているだけです。九州17都市・約155万棟という規模の建物データを、位置・高さ・構造といった基本属性つきで無償利用できること自体が、Project PLATEAUの整備・公開なしには実現しません。今回補正できたのは、その中のごく一部(770棟の優先候補のうち471棟)に過ぎず、まだ用途不明のまま残っている建物のほうがはるかに多い、というのが実情です。
それでも、こうした「オープンデータをそのまま使う」だけでなく「他のデータと組み合わせて、もう一段使いやすい形に仕上げる」という取り組みは、Project PLATEAUが掲げる民間による活用・高度化の一つの形になれたのではないかと考えています。もし国土交通省・Project PLATEAU事務局の関係者の方にこの記事が届くことがあれば、ぜひ一度この取り組みについて意見交換させていただけると嬉しいです。
なお、本記事でご紹介しているPLATEAUデータは2026年6月時点のものであり、今回の用途補正もその時点でのスナップショットに対する加工です。国土交通省による整備内容は今後さらに改善されていく可能性がありますし、建物自体も新築・解体・用途変更などで日々変化していきます。今の状態がずっと固定されているわけではない、という前提で今回の取り組みをご覧いただければと思います。
引き続き、残りの建物についても地道に補完を進めていきます。進捗はまたこのブログでご報告します。
本記事で紹介した用途区分は、複数の外部データを組み合わせた独自の分析結果であり、公的な調査・登記情報に基づく確定情報ではありません。個別の建物用途について正確な情報が必要な場合は、各自治体・登記情報等の一次情報でご確認ください。PLATEAU建物データそのものは国土交通省が整備する3D都市モデルを情報源としています(ライセンス: CC BY 4.0)。
タグ: #PLATEAU #3D都市モデル #国土交通省 #オープンデータ #活用事例
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