地価公示・地価調査は、実は1つの標準地につき2人の不動産鑑定士が独立して評価しています。なぜ2人なのか、三方式評価とは何なのか、そしてMAPRISEに地図としてプロットされているとなぜ便利なのかを、画面キャプチャを見ながらやさしく解説します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今日は「鑑定評価書」というテーマを取り上げます。地図の上に赤いピンでプロットされている「鑑定評価書(XCT001)」レイヤー、クリックしたことはありますか?実はこのポップアップ、ちょっと面白い仕組みになっています。1つの地点なのに、鑑定士1と鑑定士2、2人分の評価額が並んで表示されるのです。

なぜ2人の鑑定士が評価しているのか
地価公示・都道府県地価調査という制度をご存知でしょうか。国や都道府県が、全国の「標準地」と呼ばれる代表的な地点を選び、毎年1月1日(地価公示)または7月1日(地価調査)時点の正常な価格を公表している仕組みです。ニュースで「今年の地価は◯%上昇」と報じられるとき、その基礎になっているのがこのデータです。
この制度の大きな特徴が、1つの標準地につき必ず2人以上の不動産鑑定士が、互いに独立して鑑定評価を行うということです。片方の鑑定士だけの主観に評価額が左右されてしまうと、公的な価格としての客観性・信頼性が損なわれてしまいます。そこで2人の鑑定士がそれぞれ独自に調査・分析を行い、両者の評価額を突き合わせたうえで、最終的な公示価格・基準地価格が決定されます。いわば「ダブルチェック」の仕組みが、地価という公共性の高い数字の裏側に組み込まれているのです。
MAPRISEでは、この2人分の鑑定評価をそのまま可視化しています。ポップアップを開くと、鑑定士1・鑑定士2それぞれの鑑定評価額が並び、上部には評価乖離(差率%・差額円/㎡)がバーグラフで表示されます。実際のデータでは、九州の標準地11,680地点のうち約87%が乖離1%未満に収まっており、2人の鑑定士がほぼ同じ結論に達していることがわかります。逆に乖離が大きい地点(3%以上、全体の約1%)は、価格形成の要因が複雑だったり、市場が動いている最中だったりする、注目すべき地点である可能性があります。
そもそも「三方式評価」って何?
ポップアップの中には「比準価格」「収益価格」「原価価格」という3つの数字が並んでいます。これは不動産鑑定評価基準が定める、価格を求めるための3つの手法(三方式)です。
- 比準価格(取引事例比較法):対象地の近くで実際にあった取引事例を集め、時点のズレや地域・個別の条件差を補正して求める価格です。住宅地・商業地など、取引が活発な土地で中心的に使われます。
- 収益価格(収益還元法):その土地・建物が将来生み出すと期待される収益(賃料収入など)を、一定の利回りで割り戻して求める価格です。賃貸オフィスやマンションなど、収益を生む不動産の評価で重視されます。ポップアップの「還元利回り」は、この計算に使う利回りです。
- 原価価格(原価法):今その建物を新たに建てるとしたらいくらかかるか(再調達原価)を求め、老朽化などによる価値の減少分を差し引いて求める価格です。
鑑定士は、これら3つの方式で試算した価格を比較・調整しながら、最終的な鑑定評価額を導きます。1つの方式だけに頼らず、複数の視点から検証するのが鑑定評価の要です。ポップアップに「採用ウェイト」と注記されているのは、対象地の性質に応じて、どの方式をどれくらい重視したかが評価額に反映されているためです。あわせて表示される「路線価」は、相続税・固定資産税の算定に使われる別の公的価格で、鑑定評価額の妥当性を確認する目安としても参照されます。

地図上にプロットされていると何がわかるのか
鑑定評価書は、本来であれば地点ごとにバラバラなPDF・紙の資料です。それを地図の上に並べることで、単独の地点情報だけでは見えなかったものが見えてきます。
まず、地域全体の価格水準の分布が一目でわかります。同じ区・同じ駅周辺でも、地点によって評価額にどれくらい差があるのか、価格が高いエリアはどこに集中しているのかを面として把握できます。次に、評価乖離の大きい地点が地図上で識別できます。乖離が大きい標準地は、価格形成が難しい・市場が過渡期にあるサインかもしれず、周辺の取引動向と合わせて詳しく見る価値があります。さらに、MAPRISEでは地価公示・地価調査、不動産取引価格(成約価格含む)、用途地域といった他のレイヤーと重ね合わせて表示できるため、「この鑑定評価額は、周辺の取引実勢や用途地域の容積率と整合しているか」を1つの画面で確認できます。左メニューの調査年・用途によるフィルタで、年ごとの変化や用途別の傾向を絞り込むこともできます。
どんな業務の方に役立つのか
このデータが特に役立つのは、対象不動産の適正な価格を把握する必要がある方々です。
金融機関の融資審査・担保評価の担当者にとって、鑑定評価額とその手法・乖離を確認できることは、担保価値の妥当性を検証するうえで有用な材料になります。不動産業者・宅建士の方は、周辺の公的な鑑定評価水準を把握することで、お客様への価格説明に客観的な根拠を添えられます。ディベロッパーにとっては、用地取得の初期検討段階で、対象地周辺の鑑定評価の傾向を面として捉えることが、事業採算の当たりをつける材料になります。不動産投資家であれば、収益価格・還元利回りの水準を地域横断で比較する、一つの参考情報として活用できます(投資判断そのものの根拠とすることは想定しておらず、最終判断は専門家にご確認ください)。
ただし、ここで一点だけ強調しておきたいことがあります。MAPRISEが提供するのは、あくまで公示された鑑定評価情報の可視化・参考情報です。個別の不動産について法的効力のある鑑定評価が必要な場合は、必ず不動産鑑定士による正式な鑑定評価を取得してください。
地味に見えて、実はとても丁寧に作られている「地価」という数字。その裏側にある2人の鑑定士の目線を、これからも見やすく届けていきます。実際の取引に基づく価格を見たい方は取引価格と成約価格の違いを解説した回も、TSMC進出のような具体的な地価変動の事例は熊本県菊陽町の地価変動を追った回もあわせてどうぞ。
本データは地価公示・都道府県地価調査に基づく鑑定評価情報を参考情報として掲載しています。法的効力を有する鑑定評価は、不動産鑑定士のみが行うことができます。個別の評価・投資判断にあたっては、不動産鑑定士等の専門家にご相談ください。
出典:国土交通省 地価公示 / 都道府県地価調査、不動産鑑定評価基準(国土交通省)
タグ: #鑑定評価書 #地価公示 #地価調査 #XCT001 #三方式評価
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