建物を建てるとき、都市ガスを引けるかどうかは、建築コストと入居者の月々の負担の両方を左右します。MAPRISEの都市ガス供給区域レイヤーで、全国の事業者の対応地域と連絡先を、用地の検討段階で確認する方法をまとめました。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。
建物を計画するとき、「この土地に都市ガスは来ているのか」は、意外と後回しにされやすい確認事項です。しかし、都市ガスを引けるか、プロパンガス(LPガス)で計画するかは、建築コストと、入居者の月々の負担の両方に影響します。この記事では、MAPRISEの都市ガス供給区域レイヤーでできることと、事業者側がこのレイヤーを活用する利点を、実務の観点から整理します。
この記事のポイント
- 都市ガスとプロパンガスは、料金・導入コスト・災害時の性格が異なり、どちらが有利かは用地と入居者像によって変わります。
- MAPRISEの都市ガス供給区域レイヤーでは、全国の都市ガス事業者の対応地域を市区町村単位で色分けして確認でき、クリックすると事業者名と事業者サイト(問い合わせの入口)を確認できます。
- 用地の検討段階で「都市ガスが見込めるか」を大づかみにし、正式な可否は表示された事業者へ照会する、という使い方が現実的と考えられます。
都市ガスとプロパンガス ― 比較の前提
まず、両者の違いを実務の目線で整理します。以下は一般的な傾向であり、料金や条件は事業者・地域・契約によって大きく異なります。
| 観点 | 都市ガス | プロパンガス(LPガス) |
|---|---|---|
| 供給方式 | 道路下の導管で供給 | ボンベを戸別または集合で設置し、配送 |
| 導入コスト | 本管からの引込工事が必要。距離や道路条件で変動 | 貯蔵設備の設置が中心。導管工事は不要 |
| 料金の傾向 | 比較的安定しているとされます | 販売事業者が価格を設定するため、事業者間の差が大きいとされます |
| 災害時 | 導管全体の安全確認が必要で、復旧に時間を要する場合があります | 戸別に設備を点検でき、復旧が比較的早い傾向があるとされます |
| 供給できる地域 | 導管が届く区域に限られます | 原則として、どこでも利用できます |
プロパンガスの強み:災害時の独立性
プロパンガスは、ボンベという「各戸の備蓄」を持つ分散型のインフラです。導管網を前提としないため、広域の被害が出たときも、設備を点検できれば比較的早く使える傾向があるとされています。東日本大震災でも、資源エネルギー庁の資料などで、LPガスの復旧が都市ガスより早かったと整理されています。災害時にも使える熱源を確保したい物件では、大きな利点と考えられます。
プロパンガスの弱み:割高になりやすい料金
一方で、プロパンガスは都市ガスより割高になりやすいとされ、事業者や地域によっては、都市ガスの2倍以上になるという指摘もあります。入居者にとって、この差は無視できません。
特に、お湯の使用量が多い世帯では、給湯・暖房・調理にかかるガス代が積み上がります。ほとんどお湯を使わない単身者向けの物件であれば差は小さい一方、ファミリー向けでは、毎月の負担差が数年単位で効いてくると考えられます。
ディベロッパーの悩みどころ:建築コストと入居者コストの綱引き
建物を建てる側にとっては、論点がさらに増えます。
- 都市ガスを引ける場合:引込工事の費用がかかる一方、入居者のガス代は抑えやすく、募集時の訴求にもなり得ます。
- 都市ガスが近くまで来ていない場合:引込距離が長いと、工事費が大きくなります。プロパンで計画すれば初期費用は抑えられますが、入居者の負担が重くなる可能性があります。
- 災害時の備えを価値として打ち出すなら、プロパンの独立性を、あえて選ぶ判断もあり得ます。
つまり、「都市ガスを引けるか」「引くといくらかかるか」を早い段階で見極めることが、事業の採算にも、入居者の満足度にも直結します。その入口が、供給事業者の対応地域の把握です。
MAPRISEの都市ガス供給区域レイヤーでできること
このレイヤーでは、市区町村ごとに、どの都市ガス事業者の供給区域に含まれるかを、各社が公表する供給約款や供給区域図から調査して、塗り分けています。
- 全国の一般ガス導管事業者189社の公表資料に基づき調査(2026年10月時点)
- 対象の1,898市区町村を、次の3区分で表示します
- 供給区域あり(事業者ごとに色分け):857件
- 情報未確定(事業者は存在):4件
- 該当事業者なし:1,037件
- 地図をクリックすると、事業者名と事業者サイトへのリンクを確認できます
九州7県で始めたこのレイヤーを、全国へ広げました。経緯と設計の考え方は、水道は載せられなかった。都市ガスは載せられたで紹介しています。
広域で見る:どこに、どの事業者がいるか
全国を俯瞰すると、都市ガスは大都市圏に集中し、事業者ごとの色の塊が、それぞれの供給エリアを示します。地方では、都市部を中心に点在する様子が見て取れます。ここでは、地域ごとの見え方を確認します。
首都圏
首都圏では、東京ガスネットワークを中心に、神奈川・埼玉・千葉へ供給区域が連なり、その外側に武州瓦斯、京葉瓦斯など多くの事業者の区域が並びます。

中京圏
中京圏では、名古屋市を中心に東邦ガスネットワークの区域(赤)が愛知県から岐阜・三重へ広がり、静岡側には別の事業者の区域が続きます。

近畿圏
近畿圏では、大阪湾沿いから京都・滋賀・奈良へ、水色の大きな区域がひと続きに広がります。一方、兵庫県北部や淡路島などには別の事業者の区域が点在します。

北海道
北海道では、札幌周辺と、道東・道南の一部の都市に区域が点在し、広い範囲は供給区域の外にあります。ここはプロパン前提で計画する場面が多くなると考えられます。

九州
九州では、福岡・北九州、長崎、熊本、鹿児島などの都市部に区域が集まり、内陸や離島は点在にとどまります。

クリックすると、何が分かるか
市区町村をクリックすると、まず「この地点に◯件の情報があります」という一覧が開き、「都市ガス供給区域」の行から「詳細を表示」を選ぶと、詳細が開きます。下の画像は、愛知県小牧市で詳細を開いたところです。

確認できるのは、おもに次の情報です。
- その市区町村の供給状況(供給区域あり/情報未確定/該当事業者なし)
- 該当するガス事業者名
- 事業者サイトへのリンク(照会の入口)
- 約款上の供給範囲などの備考(ある場合)
- 出典と、市区町村単位の概況である旨の注記
「どこに問い合わせればよいか」まで分かる点が、実務では地味に効きます。
ご注意:このレイヤーは市区町村単位の概況です。同じ市区町村内でも、大字や地区単位で供給区域が限定される事業者が多く、個別の敷地に導管が来ているかは示せません。また、区域を確認できていない事業者が6社あるため、「該当事業者なし」は、都市ガスが無いことの保証ではありません。正確な供給可否は、表示された事業者へ直接ご確認ください。
事業者・ディベロッパーがこのレイヤーを使う利点
1. 用地の一次スクリーニングが早くなる
用地の候補が複数あるとき、まず「都市ガスの見込みがある土地」と「プロパン前提になりそうな土地」を地図で仕分けできます。事業者へ個別に電話する前に、照会先を絞り込めるため、初動の工数を減らせると考えられます。
2. 照会先がその場で分かる
事業者名と事業者サイトへのリンクが、地図上で分かります。供給区域図を事業者ごとに探したり、管轄を調べたりする手間を、省ける場合があります。複数の市区町村をまたぐ開発では、特に有効です。
3. 事業収支の前提を早く置ける
都市ガスを前提にするか、プロパンを前提にするかで、建築コストも、入居者の月額負担も変わります。早い段階で前提を置けると、収支試算のやり直しが減ります。
4. 他のレイヤーと重ねて判断できる
同じMAPRISEの中で、ハザード、用途地域、学区、水道事業者などのレイヤーを重ねられます。ガスだけでなく、立地の総合的な評価の中で、設備の方針を決められます。
5. 重要事項説明の下調べに使える
不動産取引では、飲用水・電気・ガス・排水施設の整備状況の説明が求められます。本レイヤーは参考情報であり、これだけで要件を満たすものではありませんが、確認先を押さえる下調べとして活用できます。
使い方の手順
- MAPRISEを開き、レイヤーメニューの「生活施設・学区」グループから、**都市ガス供給区域(全国・事業者別)**をオンにします。
- 検討している地域まで、地図を移動・拡大します。
- 市区町村をクリックして、供給状況、事業者名、事業者サイトを確認します。
- 事業者へ、対象の敷地について供給可否と引込条件を照会します。
このレイヤーは、Starterプラン以上でご利用いただけます。
おわりに
都市ガスかプロパンかは、どちらが優れているという話ではなく、用地と入居者像に合った選択をするという話だと考えています。そのための最初の一歩として、「この地域に、どの事業者がいるのか」を地図で把握していただければ幸いです。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事の都市ガス供給区域のデータは、各都市ガス事業者の公表供給約款・供給区域図をもとに当方が調査した参考情報です(2026年10月時点)。料金・復旧に関する記述は一般的な傾向であり、個別の条件を保証するものではありません。
参考にした外部サイト
- LPガスと都市ガスの災害時の復旧に関する資料(資源エネルギー庁):https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/sekiyu_gas/ekika_sekiyu/pdf/004_04_00.pdf
- LPガスのメリット・デメリット(セレクトラ):https://selectra.jp/lpgas/guides/knowledge/lpgas-pro-con
- LPガス業界の動向(みずほ銀行 産業調査部):https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/pdf/msif_237.pdf
タグ: #都市ガス #プロパンガス #LPガス #ガス事業者 #供給区域 #ディベロッパー #用地取得 #災害対策 #重要事項説明
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