鉄道は、人だけでなく石炭や材木、工場の製品を運ぶために敷かれてきました。MAPRISEの4分割表示で、廃線レイヤー・現在の地図・2つの時代の航空写真を並べ、自転車道になった線路、夕張の炭鉱鉄道、尼崎の工業地帯の貨物線、平成に姿を消した北九州の路面電車の跡をたどります。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。
先日、全国の廃線と旧駅を年ごとに見られる「鉄道の歴史(廃線)」レイヤーを追加しました。今回はその続きとして、いくつかの廃線を、地図を4つに分けて並べながら、もう少し近くで見てみます。
鉄道は、人より先に「もの」を運んでいた
鉄道というと、通勤や旅行で人を運ぶものを思い浮かべます。ただ、鉄道が各地に敷かれていった時代、主な役割のひとつは貨物でした。炭鉱から掘り出した石炭、鉱山の地下資源、山から切り出した材木、そして工場に運び込む原料や、工場から出ていく製品です。
そうした線路は、炭鉱が閉じ、工場が移り、トラックが荷物を運ぶようになると、役目を終えていきました。その跡は、いまは道路や自転車道、公園、住宅地になっていて、言われなければ気づかない場所も多くあります。
4分割で、同じ場所を4つの地図で見比べる
今回の画像は、MAPRISEの4分割表示(Starter以上)で、同じ場所・同じ縮尺の地図を4つ並べています。
- 左上: 鉄道の歴史(廃線)レイヤー。橙色の線は、上の年表示(「廃線の歴史 ○○年」)の年に運行していた区間、紫色の印は旧駅です。
- 右上: 通常の地図(現在)。廃線レイヤーを重ねていない、いまの地図です。
- 左下・右下: 線路があった時代の航空写真を、2つの時代分。
4つの地図は、動かしたり拡大したりすると連動します。左上で線路の位置を確かめ、右上でいまの道の形を見て、下の2枚で当時の様子を確かめる、という順で見ると分かりやすいと思います。
線路のカーブが、いまは自転車道に ― 岡山県倉敷市(下津井電鉄)
最初は、岡山県倉敷市の北部、林・曽原のあたりです。ここには、茶屋町(倉敷市)と児島、下津井を結んだ下津井電鉄が走っていました。線路の幅が狭い、小さな鉄道です。このうち茶屋町〜児島の区間は1972年に廃止され、MAPRISEのデータでは、この区間の跡の多くが「茶屋町児島自転車道」として記録されています。

左上の橙色の線は、川に沿うように北から南西へ緩やかに曲がっています。右上の現在の地図では、同じ位置に川沿いの細い道が通っていて、線路の曲がり方がそのまま道の形として残っているように見えます。下の2枚の航空写真では、田んぼの中を斜めに横切る筋が見えます。
北海道の炭鉱を支えた鉄道 ― 北海道夕張市(清水沢)
次は、北海道夕張市の清水沢です。夕張は、石炭の町として栄えた地域です。清水沢は、山の奥の炭鉱へ向かう三菱大夕張鉄道が分かれていた場所で、この鉄道は1987年に廃止されました。

左上では、橙色の線が何本も重なり、大きな弧を描いています。ところが右上の現在の地図では、その弧はほとんど見当たりません。
下の航空写真を見ると、印象が一変します。1961〜1969年の写真には、何本もの線路が並ぶ広い構内と、煙を上げる施設、扇のように広がる大きな灰色の山が写っています。1974〜1978年の写真でも、線路の束と、黒っぽい山や施設が見えます。ここが、石炭を運ぶ鉄道の拠点だったことが、写真から伝わってきます。
北海道には、夕張のほかにも、美唄や芦別、歌志内など、炭鉱とともに走り、炭鉱とともに姿を消した鉄道が数多くあります。前回の記事でご紹介したように、年を動かすと北海道の橙色の線が次々と消えていくのは、こうした歴史の表れでもあります。
工業地帯へ貨物を運んだ線路 ― 兵庫県尼崎市(尼崎港線)
3つ目は、兵庫県尼崎市の大物(だいもつ)付近です。ここには、福知山線の尼崎から南へ、臨海部の工業地帯と尼崎港へ向かう支線(尼崎港線)が通っていました。旅客の扱いは1981年に、路線そのものは1984年に廃止されています。

左上の橙色の線は、碁盤の目のような街並みを、斜めに横切っています。右上の現在の地図でも、同じ位置に斜めの道が見えます。まわりの道とは向きの違う一本の道が、線路の跡を物語っているように見えます。
下の航空写真では、斜めに延びる線路のすぐ脇に、ノコギリ屋根の大きな工場の建物が並んでいます。臨海部の工場と港を結び、原料や製品を運ぶ線路だったことがうかがえます。
平成に姿を消した路面電車 ― 福岡県北九州市(西鉄北九州線・折尾)
最後は、福岡県北九州市八幡西区の折尾駅の南側です。北九州には、門司から折尾までを結ぶ西鉄の路面電車(西鉄北九州線)が走っていました。区間ごとに廃止が進み、最後に残った黒崎駅前〜折尾の区間も、2000年(平成12年)に廃止されました。

左上には橙色の線が3本ありますが、上の2本は、MAPRISEのデータにJRの旧線として収録されているものです。今回見ていただきたいのは、南側の1本、西鉄北九州線です。この区間は、道路の上ではなく、専用の線路を走っていた部分があり、西端で大きく曲がって折尾駅へ向かっていました。
右上の現在の地図では、ほぼ同じ位置に、東西に長く延びる道があります。下の航空写真では、住宅地の中を東西に延びる線路の筋が、2つの時代のどちらにも写っています。
平成の時代には、ほかにも、岐阜の名鉄の路面電車(岐阜市内線・美濃町線など)が2005年に廃止されるなど、各地で路面電車が姿を消していきました。
消えていくのは、時代が変わった証でもある
廃線を地図で追いかけていると、少しさみしい気持ちになります。かつては毎日、石炭や製品や人を運んでいた線路が、いまは道路や自転車道になり、写真を並べないと、そこに鉄道があったことさえ分からなくなっています。
ただ、鉄道も慈善事業ではありません。線路や車両、駅を維持するだけでも、大きなお金がかかります。運ぶものが減り、トラックや自動車が主役になれば、鉄道が消えていくのも、時代の流れなのだと思います。さみしい気持ちはありますが、それだけ時代が大きく変化してきた、ということでもあるのでしょう。
足元の道が、実はかつての線路だった、と分かると、見慣れた街の見え方が少し変わります。土地の来歴を知る手がかりとして、廃線レイヤーと4分割表示を使っていただければうれしいです。
前回の記事では、廃線レイヤーの見方や、北海道から九州までの例をご紹介しています。あわせてご覧ください。
限界についても、正直にお伝えします
- 線路の形は OpenStreetMap への投稿をもとにしており、網羅性や位置の正確さを保証するものではありません。
- 開業・廃止の年には推定を含みます。年が分からない区間は、運行中を示す橙色にはならず、淡い灰色で示されます。
- 航空写真は、撮影された範囲や時期が場所によって異なります。同じ時代でも、写真のない場所があります。
- 線路跡は、私有地や立入が制限されている場所であることがあります。現地を訪ねる際は、ご注意ください。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事の画像は、MAPRISEの4分割表示の画面から地図の部分を切り出し、それぞれの左上に見出しを添えたものです。廃線のデータは、OpenStreetMap contributors(ODbL 1.0)と Wikidata(CC0)などをもとに、Vulcanz合同会社が加工した参考情報で、開業・廃止の年には推定を含みます。地図と航空写真は国土地理院の提供によるものです。各路線の廃止の年などは、公開されている資料に基づいています。
タグ: #廃線 #鉄道の歴史 #航空写真 #4分割表示 #炭鉱 #路面電車
他言語のシェアテキスト (例外運用向け)
通常は上の Quick share をご利用ください (X 系は日本語、LinkedIn は英語に固定)。下の 4 ペインは「英語記事を X で日本語紹介したい」「日本語記事の LinkedIn 投稿を日本語で出したい」等の例外運用に使えます。各テキストはコピー編集してから投稿することも、そのまま投稿画面を開くこともできます。
📝 廃線にも歴史あり ― 4分割の地図で、石炭・工場・路面電車の線路跡をたどる 鉄道は、人だけでなく石炭や材木、工場の製品を運ぶために敷かれてきました。MAPRISEの4分割表示で、廃線レイヤー・現在の地図・2つの時代の航空写真を並べ、自転車道になった線路、夕張の炭鉱鉄道、尼崎の工業地帯の貨物線、平成に姿を消した北九州の路面電車の跡をたどります。 https://maprise.jp/ja/blog/former-railways-four-panels/ #廃線 #鉄道の歴史
🆕 新しいブログ記事を公開しました。 《廃線にも歴史あり ― 4分割の地図で、石炭・工場・路面電車の線路跡をたどる》 鉄道は、人だけでなく石炭や材木、工場の製品を運ぶために敷かれてきました。MAPRISEの4分割表示で、廃線レイヤー・現在の地図・2つの時代の航空写真を並べ、自転車道になった線路、夕張の炭鉱鉄道、尼崎の工業地帯の貨物線、平成に姿を消した北九州の路面電車の跡をたどります。 👉 詳しくはこちら: https://maprise.jp/ja/blog/former-railways-four-panels/
📝 Closed Lines Have Histories Too — Tracing Coal, Factory and Streetcar Lines on a Four-Panel Map Railways were laid not only for people but to carry coal, timber and factory goods. Using MAPRISE's four-panel view, we l… https://maprise.jp/en/blog/former-railways-four-panels/ #Formerrailways #Railwayhistory
🆕 New on the MAPRISE blog. 《Closed Lines Have Histories Too — Tracing Coal, Factory and Streetcar Lines on a Four-Panel Map》 Railways were laid not only for people but to carry coal, timber and factory goods. Using MAPRISE's four-panel view, we line up the former-railway layer, today's map and aerial photos from two eras to trace a line that became a cycling path, a coal railway in Yubari, a freight line through Amagasaki's industrial district, and a Kitakyushu streetcar that disappeared in the Heisei era. 👉 Read the full post: https://maprise.jp/en/blog/former-railways-four-panels/ #Formerrailways #Railwayhistory #Aerialphotos #Four-panelview #Coalmining