MAPRISEの色分け等高線図に、長崎駅周辺の1mメッシュ標高を追加しました。長崎県の公開している3次元点群を使えるかを県に照会した経緯と、既存の地図と並べて見えた、埋立地の起伏・水路・造成地の段・谷筋を紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。地図好きのエンジニアとして、今回はとても嬉しいお知らせです。
MAPRISEの色分け等高線図に、長崎駅周辺の1mメッシュ標高を追加しました。長崎県が公開している3次元点群から、当社でタイルを作ったものです。「坂の街」長崎を1mの細かさで見ると、これまで見えなかった地形がたくさん現れました。この記事では、県へ問い合わせた経緯と、実際に見えたものを紹介します。
なぜ、長崎県に問い合わせたのか
色分け等高線図は、これまで国土地理院の標高タイル(1m・5m・10m)だけで描いていました。ところが長崎は、平地が少なく、斜面に住宅が張りつく街です。地理院の5mや10mでは、斜面の途中にある小さな段差までは拾いきれないことがあります。
そこで目をつけたのが、長崎県が「オープンナガサキ」で公開している3次元点群(LAS形式)です。ただ、有料サービスの背景地図として使ってよいのかが、分かりませんでした。公共測量成果に当たる場合は、測量法に基づく使用承認が必要になるためです。
そこで2026年10月15日に、長崎県土木部建設企画課へ、次の3点を問い合わせました。
- 点群は、公共測量成果に当たるか
- 測量法第43条・第44条の承認申請は必要か
- 点群から作った等高線図を、有料サービスの背景地図として配信してよいか
県からの回答
10月20日に、ご回答をいただきました。ありがとうございました。
- LASデータは、取扱い上、公共測量に該当しません。
- そのため、測量法の承認申請は不要です。
- オープンナガサキの利用規約(CC BY 4.0)に定める条件を守れば、有料サービスの背景地図として配信しても支障はありません。条件は、組織名・リソース名・URLの3点を表示することです。
- 標高グリッド(DEM)や標高タイルは、現時点で公開の予定はありません。
県が標高タイルを出していないため、点群から当社でタイルを作ることにしました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 範囲 | 長崎駅周辺の9図郭(約3km × 2.25km)。長崎市全域ではありません |
| 元データ | 公開フォルダ(2022年3月)の点群、約3.1GB |
| 作り方 | 1m格子の標高に変換し、タイル163枚(約7.5MB)として配信 |
| 精度の確認 | 地理院の5mメッシュ標高(DEM5A)と約29万地点で比較。平均差 −0.04m、中央絶対誤差 0.13m、RMSE 1.81m |
| 誤差が出やすい場所 | 建物が密集する場所、樹林の急斜面(地面の点が少なく、補間になります) |
範囲内の標高を集計すると、約3分の1の面積が標高5m未満、約3分の1が標高50m以上でした(点群のある範囲で集計)。最高点は約224mです。海辺の低地と山が、数百メートルの距離で入れ替わる街なのだと、数字からも分かります。
1mだと、何が良いのか
坂の街では、数メートルの段差が暮らしに直結します。10mメッシュでは、数十メートル幅の起伏が平均されて消えてしまいます。1mなら、水路の筋、石垣や擁壁の段、造成地の縁まで、線として現れます。
見え方の違いを、実際の画面で比べてみます。以下の図は、いずれもMAPRISEの実画面(等高線の間隔は2m)です。**左が既存の地図(淡色地図)、中が従来の見え方(地理院の標高だけ)、右が今回の長崎県の点群(1m)**です。同じ場所・同じ縮尺で並べているので、地名や施設は左の地図で確認できます。
おっ!となる等高線5選
① 新県庁舎のまわり:埋立地の「1〜2mの起伏」まで線になる

左の地図で、長崎駅の港側に「県庁」の文字があります。長崎県庁は、2018年に江戸町から移転しました。新庁舎は、長崎駅の横(港側)にある、旧長崎魚市の跡地に建っています。
このあたりは、明治37年(1904年)に完成した港湾奥部の埋立でできた土地です。点群で測ると、標高は2〜5mでした。右の画像では、その平らな埋立地にある1〜2mの小さな起伏が、等高線の輪として現れます。
一方、旧県庁(江戸町)は、岬の突端でした。16世紀後半に「岬の教会」が建ち、江戸時代の初めに長崎奉行所の西役所が置かれた場所です。旧県庁は岬の上、新県庁は埋立地の上と、地形がまるで違う2つの場所を、1mの標高なら同じ地図で見比べられます。
なお、ここに出る「輪」の原因(盛土や構造物の跡など)までは、確認できていません。まずは「埋立地にも1〜2mの起伏がある」と見ていただければと思います。
② 尾上町・幸町:平らに見える低地に、水路や盛り土の筋

長崎駅のすぐ北、浦上川の東側です。地理院の標高だけでは、低地がほぼ一面同じ色になります。1mの点群では、細い水路や、わずかな盛り土の筋が線として現れます。
右の画像の濃い青は、浦上川の水面です。点群は水面でも返りがあるため、川が色付きになります。これは、現時点での既知の制約です。
③ 1mと「10m相当」の比較(尾上町・幸町付近)

②と同じ場所を、さらに近くで比べました。左は、同じ点群を10mごとの平均に間引いたものです。カクカクのブロック状になり、水路や盛り土の筋が消えます。右の1mでは、数十センチの起伏まで線になります。
なお、左の図は、当社が1mのデータを間引いて作った試算で、地理院のデータそのものではありません。「1mでなければ見えない世界がある」というのが、この図で伝えたかったことです。
④ 立山:長崎東中学校・高等学校の平らな敷地

駅の北東、立山の山腹です。左の地図では、長崎県立長崎東中学校・高等学校(立山5丁目)の敷地が、白い平地として描かれています。標高は約183mです。
右の等高線で見ると、その縁は、山肌を削った階段状の段になっています。敷地の外側では、斜面の等高線が急に詰まります。
同じ長崎でも、①は標高2mの海辺、④は標高183mの山の上です。この差を、1つの地図で切り替えながら見られる点が、等高線図の楽しさです。
⑤ 浜平・天神町・御船蔵町:谷筋と尾根がくっきり

駅の北東の斜面です。左の地図の茶色の線だけでは追いにくい谷筋と尾根が、右では色の帯として読み取れます。
この画像には、点群の弱点も写っています。右の縦に走る1本の線は、図郭の継ぎ目です。また、樹林や建物の下は補間になるため、実際の地面より滑らかに見える場所もあります。それも含めて、1mデータの「素顔」として楽しんでいただければと思います。
MAPRISEで見るには
MAPRISEの背景地図で「色分け等高線図」を選び、等高線の間隔を切り替えます。長崎駅周辺では、地図をズーム16以上に拡大すると、長崎県の点群で描かれます。範囲外や、それより引いた画面では、これまでどおり国土地理院のデータで描きます。
不動産の下見や、造成地・斜面の確認、街歩きの下調べなど、坂の街ならではの使い方ができると考えています。
本記事のデータについて
- 1mメッシュで描かれるのは、長崎駅周辺(約3km × 2.25km)のみです。長崎市全域ではありません。
- 点群は、2022年3月公開フォルダのものです。国土地理院の最新版と、地形が異なる場所があります。
- 川などの水面は、点群の返りにより、色が付く場合があります。
- 標高は誤差を含み、正確な高さを保証するものではありません。
- 図の「中」は、長崎県の点群のタイルを読み込ませない設定で表示した、地理院の標高だけの見え方です。図③の「10m相当」は、当社が点群を間引いて作った試算です。
- 県庁・埋立・旧県庁の記述は、下記の参考文献によるものです。①の起伏の原因は確認できていません。
- 地図の地名・施設は、国土地理院の淡色地図の表記によります。
おわりに
坂の街・長崎を1mで眺めると、同じ土地が、まったく違う顔を見せてくれました。範囲は長崎駅周辺だけですが、今後、広げられる場所があれば広げていきたいと考えています。
あらためて、点群の利用についてご回答くださった長崎県のご担当の皆さまに、御礼申し上げます。
ご質問やご意見は、info@maprise.jp までお寄せください。
出典・参考文献
- 長崎県等「オープンナガサキ 3次元点群データ」(加工して作成・CC BY 4.0):https://opennagasaki.nerc.or.jp/
- 長崎魚市場の歴史(長崎魚市場前史):https://www.nagasaki-uo.co.jp/ichiba_history01.htm
- 長崎市「第3章 地形・地質」:https://www.city.nagasaki.lg.jp/uploaded/attachment/3204.pdf
- 長崎市「長崎の港の歴史」:https://www.city.nagasaki.lg.jp/nagazine/hakken0708/index1.html
- 長崎県庁舎(Wikipedia):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E7%9C%8C%E5%BA%81%E8%88%8E
- 長崎県庁舎跡地を国史跡指定へ(長崎新聞 2026年1月2日):https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=cb460164b3014f27856160803bffc23e
- 地図・データ:淡色地図・標高タイル(国土地理院)(MAPRISE で加工して表示しています。各データの提供元とライセンスはデータソース一覧に、地図で見られるデータはレイヤー図鑑にまとめています)
タグ: #長崎 #等高線 #色分け等高線図 #点群 #オープンデータ #標高 #1mメッシュ #坂の街 #オープンナガサキ
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