前回の続きとして、関西・中京圏(と隣接する東海)の斜面に並ぶ太陽光パネルを、4分割表示で見ました。あわせて、パネルの寿命と切り替え時期、メガソーラーが広がった当時の制度、国民負担のこと、そして山林を切り開いたあとの森のことを、調べた範囲でやわらかくまとめました。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。前回の記事「斜面に連なる太陽光パネルと、がけ崩れの警戒区域を4分割で見る」の続きとして、今回は、関西と中京圏の斜面を探してみました。あわせて、太陽光パネルの寿命や、メガソーラーが広がった当時の制度、そして山林を切り開いたあとの森のことを、調べた範囲でまとめています。
なお、後半には、私の考えも含まれます。特定の事業者や設備を批判するものではなく、「こういう見方もあるのではないか」という、やわらかな問いかけとして、お読みいただけたらうれしいです。
関西・中京圏でも、同じ方法で探してみました
前回と同じく、AIが検知したパネルの範囲と、急傾斜地の警戒区域(国土地理院タイル)の位置関係を、地図のデータで照合しました。
結果は、九州や北関東に比べると、条件に合う場所は少なめでした。関西では2か所、三重県で1か所が見つかりました。愛知県と岐阜県では、今回の照合の範囲では、条件に合う場所が見つかりませんでした。代わりに、隣接する東海の静岡県で、とても分かりやすい場所がありましたので、あわせてご紹介します。
左上がパネルの検知範囲、右上が航空写真、左下が色別標高図、右下が急傾斜地の警戒区域(黄色=警戒区域、赤=特別警戒区域)です。
1. 兵庫県相生市佐方 ― 道路沿いの斜面に並ぶパネル

道路に沿った斜面に、パネルが整然と並んでいます。航空写真では、斜面の上のほうに住宅が見えます。右下では、警戒区域が、パネルの南側(斜面の下側)に重なっています。
2. 和歌山県和歌山市深山 ― 池のそばに広がる大規模な発電所

航空写真では、数えきれないほどのパネルが、池のそばの広い土地に並んでいます。左上の紫色が、AIが検知した範囲で、とても広いことが分かります。右下では、警戒区域が、パネルの範囲の北側の端にかかっています。
3. 三重県四日市市貝家町 ― 山あいの道路沿いのパネル

山あいの道路沿いに、いくつかの区画に分かれて、パネルが並んでいます。警戒区域は、パネルのすぐ北側の斜面にあります。
4. 静岡県菊川市河東(東海)― 森に接して広がる大規模なパネル

森に接して、非常に広いパネルの面が広がっています。右下では、赤と黄色の警戒区域が、パネルの西側の縁に沿って、細長く伸びていることが分かります。4つの画面を並べると、「森」「パネル」「斜面」「警戒区域」の関係が、ひと目で分かります。
太陽光パネルの寿命と、切り替えの時期
ところで、これらのパネルは、いつまで使えるのでしょうか。調べた範囲では、次のように整理できます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| パネルの寿命 | 25〜30年程度。メーカーの出力保証の期間の根拠にもなっています |
| 法定耐用年数 | 17年(税務上の区分で、実際の寿命とは異なります) |
| パワーコンディショナー | 10〜15年程度。パネルより短く、10年を過ぎるとメーカー保証の期間から外れることが多いです |
| 固定価格での買取期間 | 事業用(10kW以上)は20年、住宅用(10kW未満)は10年 |
つまり、パネルそのものは、買取期間が終わったあとも、なお使える場合がありますが、パワーコンディショナーなどの機器は、途中で交換が必要になります。切り替えの選択肢としては、おおむね、次の4つが考えられます。
- パワーコンディショナーだけを交換して、そのまま使い続ける
- パネルを新しいものに入れ替える(出力を上げる)
- 買取期間が終わったあとも、売電先を変えるなどして続ける
- 設備を撤去し、パネルを廃棄・リサイクルする
撤去と廃棄に備えて、2022年7月からは、10kW以上の事業用の発電事業者に、廃棄等の費用を、あらかじめ積み立てることが義務づけられています。また、環境省の試算では、使用済みパネルは、2030年代後半から急に増え、年間50〜80万トン規模になる見込みとされています。国は、リサイクルを、まず多量に排出する事業用の事業者から、段階的に義務づける方針を示しています。
メガソーラーが広がった当時のこと
メガソーラーが各地に広がった背景には、2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)があります。この制度では、再生可能エネルギーで作った電気を、あらかじめ決めた価格で、一定の期間、電力会社が買い取ります。2012年度の事業用の太陽光は、1kWhあたり40円で、20年間の買取でした。
「国の補助金」と言われることもありますが、正確には、税金から出る補助金というより、「高めの価格で長期間買い取る」という仕組みでした。その買い取りの費用は、私たちが払う電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」で、みんなで支えています。事業者にとって、売電の収入が見込みやすかったことが、大規模な設置が急速に進んだ一因と考えられます。
国民の負担は、増えていないでしょうか
では、その負担は、どう変わってきたのでしょうか。再エネ賦課金の単価は、次のように推移しています。
| 年度 | 再エネ賦課金(1kWhあたり) |
|---|---|
| 2012年度 | 0.22円 |
| 2021年度 | 3.36円 |
| 2025年度 | 3.98円 |
| 2026年度 | 4.18円(過去最高) |
2026年度は、再エネの買取費用が約4兆8,507億円で、そのうち、賦課金で賄う分が、約3兆2,012億円とされています。月400kWhを使う標準的な家庭で、年間の負担は、約2万円(20,064円)です。負担のピークは、2032年ごろと見られています。
数字だけを見れば、負担は、制度が始まったころより、大きくなってきています。ただし、次の点も、あわせて考える必要があるように思います。
- 賦課金は、太陽光だけでなく、風力、バイオマスなど、固定価格で買い取る再生可能エネルギー全体の費用です。
- 再エネが増えることで、燃料の輸入を減らし、二酸化炭素を減らす効果も期待されています。
- 初期の高い買取価格の分が、これから、少しずつ終わりに近づいていきます。
「負担が増えたこと」と、「得られたもの」を、どう評価するかは、人によって異なると思います。大切なのは、数字を知ったうえで、これからの形を考えることではないでしょうか。
屋根やビルの屋上は、よい活用方法だと思います
私は、ビルの屋上や、工場・倉庫の屋根、駐車場の上などを使った太陽光発電は、とてもよい活用方法だと考えています。すでに人の手が入っている場所で、新しく自然を切り開く必要がないためです。
国も、この方向に舵を切りつつあります。2027年度以降、10kW以上の地上設置型の事業用太陽光は、FIT/FIP制度で、新しく認定しない方針が示されています。屋根などの、地域と共生できる設置へ、支援を重点化していく流れです。
山林を切り開いたあと、森はどうなるでしょうか
一方で、気になることがあります。かつて山林だった場所を、大規模に切り開いてメガソーラーとした場合です。
林野庁の資料によると、太陽光発電のための林地開発許可は、平成25年度から令和2年度までの累計で、約1万3千件、面積で約1万9千ヘクタールに上るとされています。また、前回ご紹介したように、斜面の山林では、土砂災害への心配も指摘されています。令和7年12月には、政府が、メガソーラーに関する対策パッケージを決め、森林法に基づく林地開発許可の基準も、見直しが進められています。
私が心配しているのは、次のようなことです。
- 売電の優遇が終わり、設備への投資と収入が合わなくなったとき、パネルが撤去されても、切り開かれた山林が、すぐに元の森に戻るわけではないこと。
- 森には、たくさんの動物や植物が暮らしていて、一度失うと、元の生態系に戻るまでに、とても長い時間がかかること。
- 森が持つ、雨水をたくわえる働きも、同じように失われてしまう可能性があること。
もちろん、積立金やリサイクルの仕組みなど、将来に備える制度も整いつつあります。それでも、一度失われた森は、取り戻すのに、長い時間と費用が必要なのだと、改めて感じます。
森林環境税のことも、思い出してみたいです
もうひとつ、思い出したいことがあります。2024年度から、「森林環境税」が始まりました。国内に住所のある個人が、年に1,000円(個人住民税に上乗せ)を負担するもので、集まったお金は、「森林環境譲与税」として、市町村や都道府県に配られ、森林の整備や、それを担う人材の育成などに使われます。想定される税収は、年に約600億円とされています。
この税は、全国の森林を守り、育てるための制度で、メガソーラーのために失った森林を回復させるために作られたものではありません。そのうえで、あくまで素朴な疑問として、私は、こう考えてしまいます。もし、メガソーラーのために切り開いた森林の回復に、結果として、新しい税金が充てられるようなことになれば、少し本末転倒ではないか、と。
森を切り開くときに、将来、その森をどう守り、どう戻すのかまで含めて考えることが、これからは、ますます大切になるように思います。
地図で確かめる意味
こうした話を考えるときに、まず役に立つのは、「どこに、どんなふうに、パネルがあるのか」を、自分の目で確かめることだと思います。MAPRISEの4分割表示では、パネルの検知、航空写真、標高、警戒区域を、同じ場所で並べて見られます。不動産の用地を調べるときにも、旅先で地形が気になったときにも、お役に立てるのではないかと考えています。4分割表示は、Starterプランからご利用いただけます。
データと出典について
- パネルの範囲は、AIが推定したもので、実際のパネルの位置と一致しない場合があります。
- 土砂災害警戒区域は、国土地理院の「重ねるハザードマップ」のタイルを表示しています。警戒区域の指定がない場所が、安全であることを意味するものではありません。
- 数値や制度は、調べた時点(2026年10月)の情報です。制度は見直しが続いており、最新の情報は、経済産業省・資源エネルギー庁・林野庁などの公表をご確認ください。
- 本記事は、地図の見方と、調べた情報の紹介であり、特定の設備や事業者の評価ではありません。私の考えは、個人的な見解です。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
出典
- 2026年度再エネ賦課金と地上設置型太陽光規制(SOLAR JOURNAL)
- 太陽光発電の規制強化(メガソーラー対策・FIT/FIP終了・リサイクル義務化)(SOLAR JOURNAL)
- FIT(固定価格買取制度)の買取価格推移(新電力ネット)
- 大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ(内閣官房)
- 太陽光発電に係る林地開発をめぐる現状と課題(林野庁)
- 太陽光パネルの寿命は何年?(東京電力 EV DAYS)
- 太陽光の廃棄費用、積立義務化(SOLAR JOURNAL)
- 令和6(2024)年度から森林環境税の課税が始まります(門真市)
- 地図・データ:国土地理院 地理院タイル・重ねるハザードマップ(MAPRISE で加工して表示しています。各データの提供元とライセンスはデータソース一覧に、地図で見られるデータはレイヤー図鑑にまとめています)
タグ: #太陽光発電 #メガソーラー #FIT #再エネ賦課金 #森林環境税 #山林 #関西 #中京圏 #4分割表示
他言語のシェアテキスト (例外運用向け)
通常は上の Quick share をご利用ください (X 系は日本語、LinkedIn は英語に固定)。下の 4 ペインは「英語記事を X で日本語紹介したい」「日本語記事の LinkedIn 投稿を日本語で出したい」等の例外運用に使えます。各テキストはコピー編集してから投稿することも、そのまま投稿画面を開くこともできます。
📝 太陽光パネルと山林のこれから ― 関西・中京圏の斜面を4分割で見て、寿命・制度・森のことを考える 前回の続きとして、関西・中京圏(と隣接する東海)の斜面に並ぶ太陽光パネルを、4分割表示で見ました。あわせて、パネルの寿命と切り替え時期、メガソーラーが広がった当時の制度、国民負担のこと、そして山林を切り開いたあとの森のことを、調べた範囲でやわらかくまとめました。 https://maprise.jp/ja/blog/solar-panels-kansai-chukyo-forests/ #太陽光発電 #メガソーラー
🆕 新しいブログ記事を公開しました。 《太陽光パネルと山林のこれから ― 関西・中京圏の斜面を4分割で見て、寿命・制度・森のことを考える》 前回の続きとして、関西・中京圏(と隣接する東海)の斜面に並ぶ太陽光パネルを、4分割表示で見ました。あわせて、パネルの寿命と切り替え時期、メガソーラーが広がった当時の制度、国民負担のこと、そして山林を切り開いたあとの森のことを、調べた範囲でやわらかくまとめました。 👉 詳しくはこちら: https://maprise.jp/ja/blog/solar-panels-kansai-chukyo-forests/ #FIT
📝 Solar Panels and the Future of Mountain Forests ― Kansai and Chukyo in a 4-Panel View, and Thoughts on Lifespan, Policy and Forests As a sequel, we look at solar panels on slopes in Kansai and Chukyo (and neighboring Tokai) in… https://maprise.jp/en/blog/solar-panels-kansai-chukyo-forests/ #solarpower #megasolar
🆕 New on the MAPRISE blog. 《Solar Panels and the Future of Mountain Forests ― Kansai and Chukyo in a 4-Panel View, and Thoughts on Lifespan, Policy and Forests》 As a sequel, we look at solar panels on slopes in Kansai and Chukyo (and neighboring Tokai) in MAPRISE's 4-panel view. We also gather, gently, what we found about panel lifespan and replacement timing, the policy at the time mega solar spread, the burden on consumers, and the forests left behind. 👉 Read the full post: https://maprise.jp/en/blog/solar-panels-kansai-chukyo-forests/ #solarpower #megasolar #FIT #renewablesurcharge #forestenvironmenttax