国土地理院「都市圏活断層図」に基づく活断層レイヤーを実装しました。2016年熊本地震の震源となった布田川断層帯、福岡市中心部を貫く警固断層、大阪の上町台地を形づくった上町断層帯、そして立川断層帯を例に、活断層の見方と重要事項説明との関係を紹介します。
こんにちは、MAPRISE開発チームです。今回は、国土地理院「都市圏活断層図」に基づく活断層レイヤーを実装しましたのでご紹介します。地図の背景を白ベースにすることで、活断層の位置と地形の起伏が浮かび上がって見えるようにしています。
活断層とは、都市圏活断層図とは
活断層とは、最近の地質時代(おおむね数十万年前以降)に繰り返し活動しており、将来も活動する可能性が高いと考えられている断層のことです。国土地理院は、1995年の阪神・淡路大震災を契機に「都市圏活断層図」の整備を始め、2024年12月時点で全国249面が公開されています。主要な都市圏を対象に、1/25,000スケールで活断層の位置や確からしさを詳細に示した地図です。
凡例は次のように色分け・線種分けされています。
- 活断層(位置が明確): 赤の実線
- 活断層(位置がやや不明確)/推定活断層: 赤の破線
- 活断層(伏在部): 赤の点線。新しい地層に覆われ、現在の地表には段差が現れていない区間です
- 海(湖)底部の活断層: 緑の実線
- 活断層(活撓曲): 地表に明瞭な段差ではなく、たわみとして現れる帯。矢印は傾斜方向を示します
背景の色分けは「地形分類」で、上位段丘面(約数十万年前に離水した台地)・中位段丘面(約十万〜数万年前)・下位段丘面(約数万〜数千年前)という3段階に分かれています。これは単なる背景情報ではなく、活断層と密接に関係しています。多くの活断層は逆断層として、地震のたびにどちらか一方の地盤をわずかに隆起させます。それが数万年、数十万年という時間をかけて積み重なった結果が、周囲より一段高い「段丘」「台地」という地形です。つまりこの地形分類は、活断層がこれまでどれだけ動いてきたかの記録でもあります。
使ってみる:熊本 ― 布田川断層帯(広域)
実際にMAPRISEで熊本県を表示すると、こうなります。

阿蘇外輪山の南西麓から熊本平野にかけて延びているのが、布田川断層帯です。2016年熊本地震(本震、M7.3)の震源断層として知られています。
使ってみる:熊本 ― 益城町中心部を拡大
同じ断層を、震源断層の直上にあたる益城町中心部までズームすると、印象が大きく変わります。

赤い実線が、住宅地や道路の区画を無視するように斜めに貫いているのが分かります。これは2016年熊本地震で実際に地表に現れた断層で、益城町では最大2m前後の水平方向のズレが生じました。この地表地震断層の一部は2018年に国の天然記念物に指定され、震災の記憶を伝える施設として整備されています。地図の上では1本の線ですが、その直上には実際に人が暮らす街があったという事実が、この拡大画面からは伝わってきます。
使ってみる:福岡 ― 警固断層
福岡市周辺を表示すると、こうなります。

警固断層帯は、博多湾から福岡市中央区・南区を経て春日市・大野城市・太宰府市・筑紫野市へと、北西−南東方向に約55kmにわたって延びています。地図を見ると分かるとおり、天神・博多をはじめとする福岡市の中心市街地の真下を通過しており、九州でも有数のビジネス・人口密集エリアの直下に活断層があるという事実は、この地図によって初めて実感できる方も多いのではないでしょうか。2005年の福岡県西方沖地震(M7.0)は、この警固断層帯の北西沖の海域延長部で発生したと考えられています。
使ってみる:大阪 ― 上町断層帯と上町台地
大阪府東部を表示すると、こうなります。

上町断層帯は、豊中市から大阪市を経て岸和田市まで、南北方向に約42kmにわたって延びる逆断層です。地図に広がるオレンジ色の上位段丁面は、この断層が地震のたびに東側を隆起させ続けてきた結果、長い年月をかけて形成された台地地形です。大阪城や天王寺、阿倍野などが乗る「上町台地」は、まさにこの断層活動の産物であり、その広がりが松原市・藤井寺市方面まで及んでいることが、地形分類の色から視覚的に読み取れます。大阪市中心部では都市化が進んでいるため、断層自体は地表に段差のない「伏在部」として表現される区間が多くなっています。
使ってみる:立川断層帯
東京都西部・多摩地域を表示すると、こうなります。

立川断層帯は、埼玉県から東京都武蔵村山市・立川市を経て神奈川県にかけて、北西−南東方向に延びる断層帯です。関東平野の西縁、多摩地域の市街地を通っており、首都圏でも警戒すべき活断層の一つとされています。
凡例の見方
凡例は、活断層の確からしさを示す線種と、地形分類の背景色で構成されています。

線が実線か破線か点線かによって、その断層の位置がどれだけ確からしく特定されているかが変わってきます。「伏在部(点線)」は、断層そのものは存在するものの、新しい地層に覆われて現在の地表には段差が現れていない区間です。都市化が進んだ場所ほど、この伏在部として表現されるケースが増える傾向にあります。
重要事項説明との関係について、正直にお伝えします
これまで本ブログで紹介してきた土壌汚染対策法や自然公園法などの区域とは異なり、活断層そのものへの近接は、現時点で宅地建物取引業法施行令第3条第1項に基づく重要事項説明の法定義務ではありません。国が定める重要事項説明の対象リストには、活断層は含まれていません。
とはいえ、マンションデベロッパーを中心に、任意の説明事項として重要事項説明書に活断層の情報を記載する例は実務上少なくありません。また、徳島県のように、独自条例(震災に強い社会づくり条例)で中央構造線活断層帯沿いに「特定活断層調査区域」を指定し、一定規模の施設について事前の届出・調査を求めている自治体も存在します。これは全国一律のルールではなく、あくまで一部自治体の取り組みである点にご留意ください。
MAPRISEをご利用の皆さまへ:立場ごとに気にしておきたいこと
法定の説明義務ではないからこそ、任意の情報としてどこまで把握しておくかが、立場によって分かれるところです。
- 不動産仲介・宅建業者: 法定義務ではありませんが、購入検討者への任意の情報提供として、対象地と活断層の位置関係を事前に把握しておくと安心です。
- デベロッパー・ファンド: 開発用地の直下やごく近傍に活断層(伏在部を含む)がないかを、造成計画・建物配置の検討材料として確認できます。
- 金融機関(融資審査): 担保評価における災害リスク評価の一材料として活用いただけます。
- 士業(鑑定・調査・法務): 鑑定評価書における地域要因の把握や、地歴調査の一環として活用いただけます。
- 自治体(都市計画・防災): 地域防災計画や被害想定との重ね合わせ、市民向けの啓発資料としても活用いただけます。
データの出典・注意点について、正直にお伝えします
このレイヤーは、国土地理院「都市圏活断層図」(全国249面、2024年12月時点)を加工して作成しています。同図が整備されている都市圏のみが対象で、未整備の地域では表示されません。また、活断層の位置や確からしさは調査時点の知見に基づくものであり、その後の調査で見直される場合があります。正確な情報は国土地理院、または各自治体の防災担当窓口へご確認ください。
おわりに
活断層は、ニュースなどで名前を聞いたことがあっても、自分が今いる場所とどのくらいの距離にあるのかを意識する機会は多くありません。今回ご紹介した益城町や福岡市中心部の例のように、実際に人が暮らす街の直下を活断層が通っているという事実を地図で確認できることには、それ自体に意味があると考えています。用地選定や資産管理の一つの判断材料として、ぜひ活用いただければと思います。
ご意見・ご質問は info@maprise.jp までお気軽にお寄せください。
本記事で紹介した活断層データは、国土地理院「都市圏活断層図」(全国249面、2024年12月時点)を加工して作成した参考情報です。同図が整備されている都市圏のみを収録しており、未整備の地域では表示されません。活断層の位置・確からしさは調査時点の知見に基づくものであり、最新の情報は国土地理院・各自治体でご確認ください。活断層への近接は、現時点では宅地建物取引業法上の重要事項説明の法定義務ではありません。個別の取引における重要事項説明の要否については、宅地建物取引士・専門家にご確認ください。
タグ: #活断層 #都市圏活断層図 #防災 #熊本地震 #地形
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